ジャズスタンダードバイブルは、ジャズセッションで演奏される定番曲のメロディーとコード進行をまとめた楽譜集で、黒い表紙から「黒本」と呼ばれることも多く、これからセッションへ参加したい初心者から、演奏曲を素早く確認したい経験者まで幅広く使える一冊です。
ただし、シリーズには通常版とハンディ版だけでなく、収録曲が異なる第2集、B♭やE♭の移調楽器向け、ヴォーカリスト向け、アドリブ練習向けなどがあり、表紙の似た本を何となく選ぶと、自分の楽器では譜面をそのまま読めなかったり、期待していた曲が収録されていなかったりする可能性があります。
最初の一冊を選ぶときは、人気が高い版を無条件に購入するのではなく、自分が担当する楽器の調、参加予定のセッションで使われている版、持ち運びの頻度、練習したい内容を整理し、その条件に合ったものから選ぶことが重要です。
ここでは、ジャズスタンダードバイブルの主要な版を比較しながら、それぞれに向いている人、通常版と移調版の違い、練習への取り入れ方、購入前に確認したい著作権上の注意点まで紹介するため、自分に必要な一冊を判断しやすくなります。
ジャズスタンダードバイブルのおすすめ版8選

ジャズスタンダードバイブルを初めて購入する場合、ピアノやギターで使うのか、サックスやトランペットで使うのか、歌詞を確認しながら歌いたいのかによって選ぶべき版が変わります。
シリーズの中心となる通常版には227曲が収録されていますが、判型や移調の有無、収録曲の方向性、付属音源の用途が版ごとに異なるため、単純に新しい本を選べばよいわけではありません。
まずは代表的な8冊の特徴を確認し、自分の演奏環境で譜面を読みやすいことと、参加するセッションで周囲と曲番号や進行を共有しやすいことを優先して候補を絞り込みましょう。
通常版
ピアノ、ギター、ベース、ドラムなど、実音を基準に譜面を読む楽器の奏者が最初に選びやすいのは、2010年に発売された通常のジャズ・スタンダード・バイブルで、一般に黒本1や通常版と呼ばれるシリーズの基本となる楽譜集です。
セッションで演奏される機会の多い227曲について、テーマのメロディー、コード進行、必要な反復記号などを見開きや短いページ数で確認できるように整理しているため、演奏直前に曲の構成を確認したい場面でも使いやすい構成です。
| 主な項目 | 内容 |
|---|---|
| 譜面の調 | in C |
| 収録曲数 | 227曲 |
| 判型 | A4変形判 |
| ページ数 | 256ページ |
| 付属物 | マイナスワン入りCD |
大きめの紙面はコードネームや音符を追いやすく、自宅の譜面台に置いて練習する人、ピアノの譜面台で複数の小節を一度に見渡したい人、細かな記号を見落としたくない人に向いています。
一方で、すべての曲についてイントロ、エンディング、代表的なリック、伴奏パターンまで書かれている教則本ではないため、この一冊だけで完成した演奏を再現しようとせず、原曲や複数の名演を聴きながらテンポ、リズム、構成を補う必要があります。
迷ったときに通常版が有力なのは、国内のジャムセッションで共通資料として扱われる場面が多く、参加者同士で曲名やページを確認しやすいためであり、特別な目的がなく実音楽器で使うなら最初の候補にできます。
ハンディ版
通常版と同じ227曲をできるだけ持ち運びやすい形で使いたい人には、A5判でリング製本を採用したジャズ・スタンダード・バイブル ハンディ版が適しており、ライブハウスや音楽スタジオへの移動が多い奏者に便利です。
収録内容はシリーズ第1集の通常版を基本としているため、小型だから曲数が大幅に減っているわけではなく、通常版の主要な役割を保ちながら、バッグや楽器ケースへ入れやすいことを重視した仕様です。
- 電車や徒歩でセッションへ通う
- 小さな譜面台を使用する
- 本を開いた状態で固定したい
- 演奏曲の確認を素早く行いたい
- 自宅用とは別に現場用が欲しい
リング製本はページが戻りにくく、見開きのまま置きやすい利点がありますが、譜面自体は通常版より小さくなるため、暗いステージ、視力に不安がある人、演奏しながら細かな臨時記号を追う人は読みやすさを事前に確認したほうが安心です。
自宅では通常版を使い、外出時にはハンディ版を使う方法もありますが、最初から二冊そろえる必要はなく、持ち運びの頻度が高いならハンディ版、据え置きで練習する時間が長いなら通常版という基準で選べます。
小型であることだけを理由に選ぶと書き込み欄の狭さが気になる場合もあるため、コード分析、イントロのメモ、代理コードの候補などを多く記録したい人は、大きな通常版のほうが長期的には使いやすいでしょう。
黒本2改訂版
ジャズ・スタンダード・バイブル2 改訂版は、第1集とは異なる227曲を中心に収録した続編で、黒本1の代表的な曲をある程度練習し、セッションで選べるレパートリーをさらに広げたい人に向いています。
ファンク、フュージョン、ボサノヴァ、モダンジャズなどを含む幅広い選曲が特徴で、第1集だけでは対応しにくいセッションや、ホストミュージシャンが少し珍しい曲を積極的に取り上げる場でも候補を探しやすくなります。
改訂版では旧版の一部収録曲が見直され、MISTYをはじめとする楽曲が追加されているため、中古で旧版を購入する場合は、現在販売されている改訂版との曲目差や、参加するセッションで使われている版を確認することが大切です。
第1集を持たずに第2集から購入することもできますが、初心者向けセッションでは第1集の曲が指定されるケースが多いため、特別に演奏したい曲が第2集へ入っている場合を除き、最初は第1集、その後に第2集という順番が理解しやすいでしょう。
通常サイズに加えてA5判のハンディ版もあるため、黒本1と黒本2を両方持ち歩きたい人はハンディ版でそろえると荷物を抑えやすく、反対に書き込みや視認性を優先するならA4変形判で統一すると使い勝手が安定します。
in B♭ハンディ版
ジャズ・スタンダード・バイブル in B♭ ハンディ版は、テナーサックス、ソプラノサックス、トランペット、クラリネットなど、B♭管の奏者が譜面どおりの運指で演奏しやすいように移調された版です。
通常のin C版をB♭管で読む場合は、メロディーとコードの両方を演奏中に移調する必要がありますが、in B♭版ならあらかじめ移調された内容を確認できるため、テーマ演奏やコードトーンの把握へ集中しやすくなります。
特にジャズを始めたばかりの管楽器奏者は、移調作業へ意識を取られると、リズム、アーティキュレーション、他の演奏者とのやり取りに注意を向けにくくなるため、自分の楽器に合った版を使うメリットが大きいでしょう。
ただし、ピアノやギターの奏者と譜面を見せ合うと、紙面に書かれているコードネームやメロディーの音名は異なるため、曲の実音キーを口頭で共有し、自分の譜面に表示されるキーとの違いを理解しておく必要があります。
B♭管を使っていても、理論学習のために実音表記を読みたい人や、アレンジ作業でin Cの資料と照合する人は通常版を併用することがありますが、最初のセッション用としてはin B♭版のほうが演奏上の負担を減らせます。
in E♭ハンディ版
ジャズ・スタンダード・バイブル in E♭ハンディ版は、アルトサックスやバリトンサックスなどのE♭管奏者向けに移調された版で、2025年に発売された持ち運びやすいシリーズです。
従来からA4変形判のin E♭版はありましたが、ハンディ版の登場によって、アルトサックスのケースや小型バッグと一緒に運びやすくなり、セッション会場でページを開いたまま使いたい人にも選択肢が増えました。
アルトサックス奏者が通常版をそのまま読むにはメロディーとコードを長6度上などへ読み替える知識が必要になるため、移調へまだ慣れていない段階では、E♭表記の譜面を使用したほうが曲の構成やフレーズへ集中できます。
一方で、E♭版だけに慣れると、バンド全体で話される実音のキーを即座に把握しにくいことがあるため、譜面上の調だけでなく、コンサートキーでは何調になるのかを毎回確認する練習も並行すると実践力が高まります。
アルトサックスでセッションへ参加する人には有力な一冊ですが、フルートやピアノも持ち替えて演奏する場合はin C版が必要になる場面もあるため、担当楽器の比率と、現場で譜面を共有する相手を考えて選びましょう。
FOR VOCAL 2nd Edition
ジャズ・スタンダード・バイブル FOR VOCAL 2nd Editionは、ジャズセッションで歌われる機会のある123曲を収録し、メロディーとコード進行に加えて歌詞を確認しやすくしたヴォーカリスト向けの版です。
歌詞が演奏用の小さな音符へ詰め込まれているのではなく、譜面とは別に読みやすく掲載されているため、英語詞の流れ、繰り返し、歌い出しの言葉を整理しながら練習したい人に適しています。
ヴォーカルセッションでは、同じ曲でも歌手の音域に合わせてキーを変更することが一般的であるため、本に記載されたキーをそのまま指定するのではなく、自分が無理なく表現できるキーを事前に決め、バンドへ正確に伝える準備が必要です。
伴奏者が使う通常版とヴォーカル版では掲載キーや構成の認識が一致しない場合があるため、演奏前には曲名だけでなく、キー、イントロの長さ、テンポ、歌の入り、間奏の回数、エンディング方法を共有しましょう。
歌詞を覚えるためだけの歌集ではなく、セッションの進行を理解する資料として活用できる点が魅力ですが、発音、フレージング、ブレス、歌詞の解釈については音源やヴォーカルレッスンで補う必要があります。
for ADLIB
ジャズ・スタンダード・バイブル for ADLIBは、黒本に収録されている定番曲から50曲を選び、初級と中級の難易度に分けたソロ例を通して、アドリブの組み立て方を学べる補助教材です。
通常版がテーマとコード進行を確認するためのリードシート集であるのに対し、for ADLIBはコードに対してどのような音を選び、フレーズをどの位置から始め、どのように着地させるかを具体的な譜例から観察しやすくなっています。
アドリブ初心者は譜例を最初から丸暗記するのではなく、コードトーンへの解決、モチーフの反復、休符の位置、音域の変化などを一つずつ抜き出し、自分の短いフレーズへ応用すると学習効果を得やすいでしょう。
掲載譜はin Cを基本としていますが、移調楽器向けの対応情報も用意されているため、サックスやトランペットでも利用できるものの、譜面の移調や自分の楽器で演奏可能な音域を確認する作業は必要です。
この本だけではセッションで必要な多数の曲を網羅できないため、通常版の代用品ではなく、黒本でコード進行を確認してもアドリブの始め方が分からない人が、練習内容を具体化するための副教材として選ぶのが適切です。
パブリック・ドメイン・セレクション
ジャズ・スタンダード・バイブル パブリック・ドメイン・セレクションは、2026年に発売されたシリーズで、パブリックドメインとなっている楽曲を中心に113曲を掲載しています。
第1集や第2集にも入っている曲に加え、新規掲載曲も含まれており、ライブ配信、動画投稿、教材制作、イベント演奏など、著作権の扱いを意識しながらレパートリーを選びたい人にとって候補を探しやすい構成です。
ただし、楽曲そのものがパブリックドメインでも、特定の編曲、録音音源、翻訳された歌詞、出版譜の紙面を無断で複製できるとは限らないため、この本を購入しただけですべての利用許諾が不要になると判断してはいけません。
演奏する国、配信先、利用するアレンジ、録音物の権利によって確認事項が変わる可能性があるため、商用配信や販売を行う場合は、利用する楽曲と素材ごとに権利関係を調べる必要があります。
セッションの基本曲を幅広く網羅する最初の一冊というより、公開演奏やコンテンツ制作で扱いやすい曲を増やしたい人、既に黒本1や黒本2を持っていて新しい選曲軸が欲しい人に向いた追加候補です。
自分に合う版を選ぶ基準

シリーズ名や表紙が似ているため、購入時には収録曲数だけで判断せず、譜面の調、判型、用途、参加するセッションの傾向を順番に確認することが重要です。
特に管楽器奏者は、in C、in B♭、in E♭の違いを見落とすと、購入後にすべての音とコードを移調しながら読むことになり、初心者ほど練習の負担が大きくなります。
一冊であらゆる目的を満たそうとせず、現場用、理論学習用、アドリブ練習用など、本に担当させる役割を決めると、必要以上に買い足さずに済みます。
楽器の調を確認する
最優先で確認したいのは自分の楽器が実音楽器なのか移調楽器なのかという点で、同じ曲でもin C版、in B♭版、in E♭版では、紙面に書かれるメロディーの音名とコードネームが異なります。
移調版は曲を別のキーで演奏するための本ではなく、異なる調の楽器が同じ実音を鳴らせるように表記を変えた本であるため、バンド全体が演奏している実際の響きは通常版とそろいます。
| 主な楽器 | 選びやすい譜面 | 確認事項 |
|---|---|---|
| ピアノ | in C | 実音表記 |
| ギター | in C | 実音より1オクターブ低く記譜される慣習 |
| ベース | in C | コード進行を中心に使用 |
| トランペット | in B♭ | 実音キーも把握する |
| テナーサックス | in B♭ | 音域を確認する |
| アルトサックス | in E♭ | 実音キーも把握する |
| フルート | in C | 曲によって音域を調整する |
持ち替えを行う奏者は、演奏頻度が最も高い楽器に合う版を最初に選び、別の楽器については移調練習を行うか、必要になった時点で追加購入すると無駄を抑えられます。
オンライン購入では商品画像だけで判断せず、タイトルにあるin B♭やin E♭の表記、通常版かハンディ版か、第1集か第2集かを商品説明とISBNで照合しましょう。
使用場面を整理する
同じ収録曲であっても、自宅の練習室で使う場合と、毎週セッションへ持ち運ぶ場合では適した判型が異なるため、購入後に本を使用する場所と頻度を具体的に想像することが大切です。
譜面台へ常設してコード分析や書き込みを行うなら通常サイズが扱いやすく、移動中の荷物を軽くして演奏現場でページを固定したいならリング製本のハンディ版が便利です。
- 自宅練習中心なら視認性を優先
- セッション中心なら携帯性を優先
- 書き込みが多いなら大判を検討
- 暗い会場では文字サイズを重視
- 歌唱中心ならヴォーカル版を検討
- 配信中心なら権利確認も重視
ハンディ版は小型でもページ数が多いため、単純な重量だけでなく、使用する譜面台の幅、ページをめくるスペース、楽器ケースの収納部分へ入るかどうかも確認すると安心です。
自宅用と現場用を分ける場合は、書き込み内容が二冊で食い違わないように、重要な変更点やイントロの指示を定期的に転記し、どちらを開いても同じ構成で演奏できる状態にしましょう。
レパートリーで決める
第1集と第2集のどちらを選ぶか迷った場合は、本の新しさや曲数ではなく、今後参加するセッションの課題曲と、自分が半年程度で練習したい曲がどちらに多く入っているかを基準にします。
初心者向けのジャムセッションでは、Autumn Leaves、Blue Bossa、All of Meなど、第1集に収録される定番曲が選ばれることが多いため、特に指定がなければ第1集から始めるほうが参加機会を作りやすいでしょう。
一方で、所属するバンドがファンクやフュージョンを多く演奏する場合、歌伴で特定のスタンダードを必要とする場合、既に第1集の主要曲を覚えている場合は、第2集やヴォーカル版が先に役立つ可能性があります。
購入前には出版社の公式ページにある収録曲一覧を確認し、曲名の似た別作品や、旧版と改訂版の違いを見落とさないように、必要な曲を十数曲程度書き出して照合すると選択しやすくなります。
すべての曲を一度に練習する必要はないため、最初の一冊では収録曲の多さよりも、実際に演奏する予定がある曲を継続的に学べることを重視しましょう。
黒本を練習とセッションで使いこなす方法

黒本はページを所有するだけで演奏力が伸びる教材ではなく、音源を聴き、テーマを覚え、コード進行を分析し、他の奏者と合わせる過程で効果を発揮する実用的な資料です。
譜面を見ながら最後まで音を並べるだけでは、演奏中にページを見失ったときや、異なるイントロを提示されたときに対応しにくいため、曲の大きな構造を記憶する練習も必要です。
一曲ごとに完璧を目指して先へ進めなくなるより、テーマ、形式、主要な進行、終わり方を段階的に身につけ、セッション経験を通して理解を深める使い方が現実的です。
一曲を段階的に覚える
最初からテーマ、コード、アドリブ、伴奏、イントロ、エンディングを同時に習得しようとすると負担が大きいため、一曲を複数の段階へ分け、できることを少しずつ増やす方法が効果的です。
まず原曲だけでなくテンポや編成の異なる演奏を数種類聴き、メロディーの輪郭、曲の長さ、AABAやABACなどの形式、よく使われるリズムの雰囲気を耳で把握します。
- 曲名と代表的な音源を覚える
- テーマを正しいリズムで歌う
- 譜面を見てメロディーを演奏する
- 曲の形式を言葉で説明する
- ルート音だけで進行を追う
- コードトーンで短いソロを作る
- イントロと終わり方を決める
テーマを演奏できたら、各コードのすべてのスケールを暗記する前に、3度と7度、ガイドトーンの動き、ツーファイブの解決先など、進行の方向を示す音から確認すると曲全体を見失いにくくなります。
最後に譜面を閉じて形式と主要なコードを思い出し、分からなくなった部分だけ黒本へ戻る方法を繰り返すと、譜面へ依存しすぎず、必要なときには資料を素早く参照できる状態へ近づけます。
コード進行を分析する
黒本のコードネームを一小節ずつ独立した情報として暗記すると量が多く感じられるため、キーの中心、ツーファイブ、循環進行、セカンダリードミナント、平行調への移動など、まとまりとして捉えることが重要です。
分析するときはコードネームの上に情報を大量に書き込むのではなく、調が変わる位置、同じ進行が繰り返される場所、AセクションとBセクションの違いなど、演奏中の道しるべになる情報を優先します。
ピアノやギターはルートを省略したボイシング、ベースはルートから次のコードへの接続、管楽器は3度や7度への着地など、同じコード進行でも担当楽器によって確認すべき内容が異なります。
黒本に示された進行はセッションで共有しやすい一つの基準ですが、録音年代、演奏者、アレンジによってコードが異なることもあるため、譜面と音源が違うときに直ちにどちらかを誤りと決めつけないようにしましょう。
複数の進行を比較した場合は、セッション当日にどの版を採用するかをメンバーで決め、代理コードを使う奏者も元の機能を把握したうえで、アンサンブルが衝突しないように調整する必要があります。
セッション前に情報を共有する
セッションでは曲名を伝えるだけで全員が同じ演奏を想像するとは限らないため、演奏開始前の短い時間で、キー、テンポ、拍子、イントロ、ソロの順番、エンディングを共有することが大切です。
ヴォーカル曲、ラテンアレンジ、変拍子、独自のブレイクを含む演奏では、黒本の譜面だけでは意図が伝わりにくいため、必要な指示を簡潔な言葉やカウントで説明できるように準備します。
| 共有項目 | 伝え方の例 |
|---|---|
| キー | 実音でE♭ |
| テンポ | ミディアムスイング |
| イントロ | 最後の8小節から |
| テーマ | 最初と最後に1回 |
| ソロ順 | 管楽器、ピアノ、ベース |
| 交換 | ドラムと4小節交換 |
| 終わり方 | 最後の4小節を3回 |
B♭版やE♭版を使用している奏者がキーを伝えるときは、自分の譜面に書かれた調ではなく、ピアノやベースと共通する実音のキーを確認すると、演奏開始時の混乱を防げます。
進行に不安がある場合は演奏中に曖昧なまま進むより、開始前にページや小節を示して確認し、全員が同じ構成を理解してからカウントを出すほうが、落ち着いた演奏につながります。
購入前に知りたい注意点

ジャズスタンダードバイブルは多くの曲を一冊で確認できる便利な楽譜集ですが、版や刷によって掲載状態が異なる曲があり、すべてのページに常にメロディーが載っているとは限りません。
また、黒本は演奏の共通言語として役立つ一方で、原曲の細かなニュアンス、歴史的な録音ごとの違い、アンサンブルの作法まで網羅した教本ではありません。
購入前に本の役割と限界を理解し、公式の商品情報、収録曲一覧、正誤情報を確認すると、期待とのずれを減らせます。
コードのみの曲がある
楽譜集に収録された作品は著作権者との契約条件に基づいて掲載されるため、以前の版ではメロディーが載っていた曲でも、新しい刷ではコード進行のみの掲載へ変更される場合があります。
目当ての曲をテーマ譜として使うために購入する場合は、曲名が収録一覧へ載っていることだけで判断せず、現在流通している版でメロディーまで掲載されているかを公式ページの注記で確認しましょう。
| 確認する場所 | 確認する内容 |
|---|---|
| 商品公式ページ | コードのみの掲載曲 |
| 収録曲一覧 | 目当ての曲の有無 |
| 奥付 | 版と刷の情報 |
| 正誤情報 | 訂正された音や表記 |
| 中古販売ページ | 旧版か改訂版か |
コードだけでも伴奏や進行確認には利用できますが、テーマの音程やリズムを学びたい場合は、正規に販売されている別の楽譜、公式音源、許諾された教材などを追加で用意する必要があります。
中古本は現在とは掲載状態が異なることがある一方、書き込み、ページ欠損、付属CDの有無も確認事項になるため、価格差だけでなく必要な情報を確実に使えるかという視点で選びましょう。
一冊だけで演奏を完成させない
黒本に書かれているのは演奏の土台となる情報であり、原曲のイントロ、特徴的なベースライン、ドラムパターン、ボイシング、アーティキュレーションまで詳細に指定したフルスコアではありません。
譜面だけを見て練習すると、音程とコードは合っていても、曲に適したリズムの感じ方やフレーズの重心が分からず、セッションで他の奏者と雰囲気が合わないことがあります。
- 複数の名演を聴く
- テーマを歌って覚える
- ベースラインを聴き取る
- ドラムのリズムを確認する
- イントロの実例を集める
- エンディングの型を練習する
- 異なるコード進行も比較する
音源を聴くときはソロの速いフレーズだけを追うのではなく、テーマの入り方、伴奏の密度、休符、ソロからテーマへ戻る合図など、曲を成立させている周辺の要素にも注意を向けましょう。
黒本を地図として使い、録音から得たニュアンスと、実際の合奏で得た経験を書き加えていくと、単なる曲集ではなく、自分専用のセッション資料へ育てられます。
よくある購入ミスを避ける
よくある失敗は、表紙だけを見て購入し、届いてから調が違うことに気づくケースであり、特にin B♭、in E♭、第2集、ヴォーカル版、ハンディ版は商品名の末尾まで確認する必要があります。
アルトサックスだから必ずE♭版、トランペットだから必ずB♭版という考え方は演奏用として分かりやすいものの、講師がin C版を指定している場合や、理論分析を実音で行う場合には通常版を求められることもあります。
また、黒本2を第2版だと誤解することがありますが、黒本2は第1集の単純な更新版ではなく、異なる曲を収録した第2集であり、黒本1の収録曲をすべて置き換える本ではありません。
ハンディ版は内容を携帯しやすくした選択肢ですが、文字が小さくなること、書き込み面積が減ること、譜面台との距離によって見え方が変わることを考慮し、可能であれば店頭で紙面を確認しましょう。
購入後は氏名を記入するだけでなく、自分の版が分かるように表紙や背へin C、B♭、E♭などの目印を付けると、複数人が同じシリーズを持ち寄るセッションでも取り違えを防ぎやすくなります。
目的に合う黒本を選んで演奏へつなげよう
ジャズスタンダードバイブルを初めて選ぶ実音楽器の奏者は、227曲を収録した通常版またはハンディ版を基本候補とし、トランペットやテナーサックスはin B♭版、アルトサックスはin E♭版、歌を中心に学ぶ人はFOR VOCAL 2nd Editionを検討すると選択しやすくなります。
黒本1と黒本2は新版と旧版の関係ではなく収録曲の異なる曲集であるため、初心者向けセッションの定番曲を優先するなら黒本1から始め、演奏機会を増やしたくなった段階で黒本2、for ADLIB、パブリック・ドメイン・セレクションなどを追加する流れが現実的です。
本を手に入れた後は、譜面を目で追うだけで終わらせず、複数の音源を聴き、テーマを歌い、曲の形式と主要なコード進行を理解し、イントロやエンディングを含めて他の奏者へ伝えられる状態を目指しましょう。
版や刷によってコードのみの掲載となる曲や訂正情報が存在するため、目当ての曲がある場合は出版社の公式情報を確認し、自分の楽器、利用場所、必要なレパートリーに合う一冊を選ぶことが、購入後の練習を実際のセッションへつなげる近道です。


