オスカー・ピーターソンの名盤を聴いてみたいものの、作品数が多すぎて最初の一枚を決められないと悩む人は少なくありません。
超絶技巧を前面に押し出した演奏、ブルースの香りが濃いピアノトリオ、歌心を味わえるバラード、ギターを加えたドラムレス編成、ほかの名手を支える共演盤まで音楽性の幅が広いため、評判だけで選ぶと自分の求める作品とは違う可能性があります。
そこで、初めて聴く人にも魅力が伝わりやすい代表作を中心に、アルバムごとの特徴、参加メンバー、注目曲、向いている人、購入時の注意点まで整理しました。
速弾きの迫力だけでなく、タイム感、左手の力強さ、旋律の美しさ、ベースやドラムとの対話にも目を向けると、オスカー・ピーターソンが長く愛されている理由が具体的に見えてきます。
まず定番の八作品から入口を選び、その後に編成や録音年代を広げていけば、膨大なディスコグラフィーの中でも迷わず好みの名演へ進めるでしょう。
オスカー・ピーターソンの名盤おすすめ8選

オスカー・ピーターソンの名盤を一枚だけ挙げるなら、親しみやすさ、演奏の完成度、選曲、録音の聴きやすさがそろった「ナイト・トレイン」が最も無理のない入口です。
ただし、ライブの熱気を求める人、ソロピアノを聴きたい人、ミュージカル曲が好きな人、歌手や管楽器奏者との共演を楽しみたい人では、最適な作品が変わります。
以下では単純な優劣ではなく、ピーターソンの多彩な魅力をつかみやすい順序を意識しながら、スタジオ盤、ライブ盤、組曲、共演盤をバランスよく紹介します。
ナイト・トレイン
「ナイト・トレイン」は、初めてオスカー・ピーターソンを聴く人に最も勧めやすく、ジャズピアノの名盤を探している人にも広く受け入れられる代表作です。
1962年に録音されて翌年に発表された作品で、ピアノのピーターソン、ベースのレイ・ブラウン、ドラムのエド・シグペンという黄金期のトリオが、ブルース感覚と洗練されたアンサンブルを両立させています。
表題曲では列車が進むようなリズムの推進力を味わえ、デューク・エリントン作品の「Cジャム・ブルース」では、簡潔な素材から演奏を大きく展開していく即興の面白さを理解できます。
速いフレーズだけに注目すると華麗なピアニストという印象で終わりますが、レイ・ブラウンの太い音を生かす間の取り方や、エド・シグペンのブラシに合わせて音量を調整する繊細さを追うと、トリオ全体を設計する能力の高さが伝わります。
アルバム終盤の「自由への賛歌」はゴスペルを思わせる力強さを備え、軽快なスウィングだけではない精神的な深みも示しているため、迷ったときは公式情報を確認できる「ナイト・トレイン」から聴き始めるとよいでしょう。
プリーズ・リクエスト
「プリーズ・リクエスト」は、ピーターソンの力強いスウィングに加えて、旋律を美しく歌わせる能力と録音の良さを味わいたい人に適した一枚です。
英語題は「We Get Requests」で、聴衆から求められる親しみやすい曲を扱うという発想を持ちながらも、単なる軽いスタンダード集にはならず、レイ・ブラウンとエド・シグペンを含む三人の緻密な呼吸が全編を支えています。
特に「ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー」は、弓で演奏されるベースの低音から始まり、ピアノとシンバルが立体的に重なるため、演奏鑑賞だけでなくオーディオ機器の音色や空間表現を確かめる曲としても知られています。
ボサノバの感触を取り入れた曲や、抑制したバラード、勢いのあるスウィングが一枚に収まり、ピーターソンはいつも音数が多いという先入観を自然に修正してくれます。
華やかなフレーズと聴きやすい選曲の両方を求める初心者に向く一方、ライブの荒々しい緊張感を第一に求める場合は少し整いすぎて聞こえることもあるため、その場合は「ザ・トリオ」を続けて聴くと違いが明確になります。
ウエスト・サイド・ストーリー
「ウエスト・サイド・ストーリー」は、有名なミュージカルの旋律を入口にして、ジャズの編曲や即興演奏を楽しみたい人に向いています。
1962年の作品で、レナード・バーンスタインが作曲した親しみやすい楽曲を、ピーターソン、レイ・ブラウン、エド・シグペンのトリオが独自のリズム感とハーモニーで再構成しています。
原曲を知っている人は旋律がどのように変形されるかを追いやすく、原曲を知らない人でも「トゥナイト」や「サムシングス・カミング」などの明快なテーマを手がかりに演奏へ入り込めます。
ピーターソンは技巧を誇示するために旋律を壊すのではなく、原曲の性格を残したままアクセント、和音、テンポの感触を変えているため、ジャズにおける解釈の自由を理解する教材としても優秀です。
一曲ごとの完成度が高く、アルバム全体にも題材の統一感があるので、映画音楽や舞台音楽は好きでもジャズのスタンダードには詳しくないという人が最初に選んでも失敗しにくい作品です。
ザ・トリオ・ライヴ・フロム・シカゴ
「ザ・トリオ・ライヴ・フロム・シカゴ」は、スタジオ録音では収まりきらないピーターソンの爆発力と、黄金のトリオが観客の前で生み出す緊張感を体験できるライブ盤です。
1961年にシカゴのロンドン・ハウスで収録され、レイ・ブラウンの強靱なビートとエド・シグペンの反応の速いドラミングを受けながら、ピーターソンが長いソロを自在に展開します。
ライブでは曲が進むにつれてフレーズの密度と熱量が高まり、客席の反応も演奏を押し上げるため、整然とした「ナイト・トレイン」や「プリーズ・リクエスト」と比べて即興が生まれる瞬間を感じやすくなっています。
超高速のパッセージだけでなく、演奏を盛り上げる位置、いったん音数を減らす位置、ベースへ主導権を渡す位置に注目すると、長いソロでも流れが途切れない構成力を理解できます。
静かなBGMとして流すよりも、まとまった時間を確保して音量を少し上げて聴くほうが魅力を受け取りやすいため、ライブジャズの臨場感や演奏者同士の駆け引きを求める人に適しています。
ストラトフォード・シェイクスピア音楽祭のオスカー・ピーターソン
「ストラトフォード・シェイクスピア音楽祭のオスカー・ピーターソン」は、ドラムを置かないギタートリオ時代の完成度を知るうえで欠かせないライブ作品です。
1956年にカナダのストラトフォードで収録され、ピーターソンのピアノ、ハーブ・エリスのギター、レイ・ブラウンのベースという編成によって、軽やかでありながら密度の高いアンサンブルが展開されます。
ドラムがないぶんリズムが弱くなるのではなく、ピアノの左手、ギターのコード、ベースの歩くようなラインが役割を分担し、三人だけで明確なスウィングを作り上げている点が大きな聴きどころです。
ハーブ・エリスとピーターソンが短いフレーズを受け渡す場面では、どちらが伴奏でどちらが主役なのかが滑らかに入れ替わり、会話型のジャズが持つ楽しさをわかりやすく体験できます。
ピアノトリオという言葉からピアノ、ベース、ドラムの編成だけを想像していた人や、ギターの柔らかな音色が好きな人に向き、黄金のピアノトリオ期とは異なる初期の魅力を発見できる一枚です。
カナダ組曲
「カナダ組曲」は、演奏技術の高さだけでなく、作曲家としてのオスカー・ピーターソンを知りたい人に勧めたい重要作です。
1964年9月9日に録音された八つのオリジナル曲で構成され、広大なカナダの土地や都市を列車で巡るような発想のもと、地域ごとに異なる景色や空気を音楽へ置き換えています。
スタンダード曲では既存の旋律をどう解釈するかが焦点になりますが、本作ではテーマ、曲の形式、和声、リズムの性格までピーターソン自身が設計しているため、演奏家と作曲家の二つの視点を同時に味わえます。
「プレイス・サン・アンリ」のようにブルースの力強さが前に出る曲もあれば、広い風景を思わせる叙情的な曲もあり、一枚を通して聴くことでカナダへの愛着と多様な音楽語法が結び付いていることがわかります。
有名スタンダードの親しみやすさを優先する人には二枚目以降が適していますが、コンセプトアルバムや組曲形式が好きな人には、「ナイト・トレイン」と並ぶ有力な入口になります。
マイ・フェイヴァリット・インストゥルメント
「マイ・フェイヴァリット・インストゥルメント」は、ベースやドラムから離れ、ピーターソン一人の表現力を集中して聴けるソロピアノの名盤です。
1968年にMPSから発表された「Exclusively for My Friends」シリーズの一作で、親密な録音空間の中から、鍵盤に触れる微妙な強弱や左右の手の独立した動きが明瞭に伝わります。
ソロではリズム隊がいないため、左手がベースや伴奏の役割を担い、右手が旋律と即興を展開しながら、必要に応じてテンポや音の密度を自在に変えています。
速弾きの場面でも単なる指の運動には聞こえず、低音の配置、内声の動き、フレーズの着地点が整理されているので、ピアノ経験者は演奏の仕組みを追う楽しみも得られます。
トリオの一体感を求める初心者より、すでに代表的なトリオ盤を聴き終えた人や、アート・テイタム系の華麗なソロピアノが好きな人に向き、MPSの作品情報を手がかりに同シリーズへ広げることもできます。
ルイ・アームストロング・ミーツ・オスカー・ピーターソン
「ルイ・アームストロング・ミーツ・オスカー・ピーターソン」は、ピーターソン自身のソロだけでなく、歌手や管楽器奏者を支える伴奏者としての力量を知るために適した共演盤です。
1957年の録音で、ルイ・アームストロングの歌とトランペットに、ピーターソン、ハーブ・エリス、レイ・ブラウン、ルイ・ベルソンが加わり、温かく親しみやすいスウィングを生み出しています。
ピーターソンは自分の技巧を前面へ出し続けるのではなく、アームストロングの声の間に短い応答を入れ、歌詞や旋律の雰囲気を壊さない和音を選ぶことで主役を引き立てています。
ボーカルが入るため器楽だけの作品より曲の情景をつかみやすく、古いジャズに硬い印象を持っている人でも、アームストロングの人間味のある表現を通して自然に楽しめます。
ピーターソンのピアノを大量に聴きたい人にはトリオ盤が先ですが、ジャズボーカル、トランペット、アメリカンソングブックが好きな人や、名伴奏とは何かを知りたい人には欠かせない作品です。
好みに合う一枚を選ぶ基準

名盤として評価されている作品でも、編成、選曲、テンポ、録音環境が好みと合わなければ、最初の印象が弱くなることがあります。
ピーターソンの演奏には華麗な速弾き、深いブルース感覚、歌うようなバラード、緻密なアンサンブルという複数の魅力があるため、自分が何を聴きたいかを決めることが重要です。
作品の知名度だけで選ばず、聴く場面や普段好きな音楽まで含めて考えると、最初の一枚から魅力をつかみやすくなります。
聴きたい魅力を決める
最初に考えたいのは、ピーターソンの何が高く評価されているのかを一度に理解しようとせず、自分が最も興味を持てる魅力から入ることです。
技巧、旋律、ライブの熱気、ブルース、共演者との会話では適する作品が異なるため、次のように目的を一つ決めると候補を絞りやすくなります。
- 総合力ならナイト・トレイン
- 音の美しさならプリーズ・リクエスト
- ライブの熱気ならザ・トリオ
- 作曲ならカナダ組曲
- ソロならマイ・フェイヴァリット・インストゥルメント
- 歌との共演ならルイ・アームストロング盤
速弾きを期待してバラード中心の場面だけを聴いたり、静かな鑑賞を望んで熱量の高いライブ盤を選んだりすると評価を誤りやすいため、アルバムの性格と聴く目的をそろえることが大切です。
迷いが残る場合は「ナイト・トレイン」で全体像をつかみ、特に気に入った要素を手がかりにライブ盤、ソロ盤、共演盤へ分岐すると効率よく楽しめます。
編成を比べる
同じピアニストの作品でも、ドラムの有無や共演者によってリズムの作り方が変わるため、編成はアルバム選びで最もわかりやすい基準になります。
ピーターソンは複数の優れたトリオを率いており、ピアノが常に中心にありながらも、周囲の楽器によってフレーズの長さ、音数、伴奏の形を変えています。
| 編成 | 音の特徴 | 代表的な候補 |
|---|---|---|
| ピアノ・ベース・ドラム | 力強く立体的 | ナイト・トレイン |
| ピアノ・ギター・ベース | 軽快で会話的 | ストラトフォード |
| ソロピアノ | 自由で濃密 | マイ・フェイヴァリット・インストゥルメント |
| 歌手との共演 | 旋律が親しみやすい | ルイ・アームストロング盤 |
ジャズらしいドラムの躍動感を求めるなら黄金期のピアノトリオが適し、音の隙間やギターとの応答を楽しみたいならハーブ・エリス参加作が向いています。
一つの編成だけでピーターソンを判断せず、気に入った曲を異なる編成の演奏で探すと、共演者に応じて音楽を組み替える柔軟性まで見えてきます。
知っている曲から入る
ジャズの即興に慣れていない人は、テーマを知らないまま長いソロを聴くと、どこが原曲でどこから即興なのかを把握しにくい場合があります。
その場合は「ウエスト・サイド・ストーリー」のようなミュージカル曲集や、コール・ポーターをはじめとする作曲家別のソングブック作品から入ると、旋律の変化を追いやすくなります。
最初にテーマを口ずさめる程度まで聴き、二回目にピアノの即興、三回目にベースとドラムへ注意を移すと、同じ演奏から異なる情報を無理なく受け取れます。
反対に、曲名や背景を調べることが負担になる人は、ブルースを中心にした「ナイト・トレイン」を選べば、説明を読まなくてもリズムと音色から楽しみやすいでしょう。
名盤を学習教材のように構えて聴く必要はなく、知っている旋律、好きな音色、気持ちよいリズムのどれか一つを入口にすることが、長く聴き続けるための現実的な方法です。
トリオの変遷から名盤を聴き分ける

オスカー・ピーターソンのアルバムを深く楽しむには、作品名だけでなく、その時期に誰と演奏していたかを知ることが役立ちます。
特にハーブ・エリスを含むドラムレスのギタートリオと、エド・シグペンを含むピアノトリオでは、同じスウィングでも音の重心や会話の方法が異なります。
さらにMPSやPabloの時代へ進むと、録音空間、曲の長さ、共演者、演奏の自由度が変化し、ピーターソンの成熟を年代順に味わえます。
ギタートリオ期
1950年代を代表するハーブ・エリスとレイ・ブラウンとのトリオは、ドラムを使わずに三人でリズムを成立させる精密なアンサンブルが特徴です。
ピアノ、ギター、ベースは音域が重なりやすいため、各奏者が常に音を詰め込むのではなく、役割を譲り合いながら一つの流れを作っています。
- ピアノの左手がリズムを補う
- ギターが和音と応答を担当する
- ベースが拍の中心を示す
- 三人が短いソロを交換する
- 小編成ならではの隙間を生かす
この時期を聴くときはピーターソンの右手だけでなく、ハーブ・エリスがコードを入れる瞬間や、レイ・ブラウンが音を短く切ってリズムを前へ進める場面にも注目するとよいでしょう。
「ストラトフォード・シェイクスピア音楽祭」のほか、作曲家別ソングブックや初期のライブ録音へ広げれば、後年のピアノトリオへつながるアンサンブル感覚を理解できます。
黄金のピアノトリオ期
レイ・ブラウンとエド・シグペンを迎えた時期は、ピーターソンの代表的なスタイルが最もわかりやすい形で記録された黄金期として扱われています。
ブラウンが低音で強い方向性を作り、シグペンがブラシから力強いスティック演奏まで細かく反応することで、ピーターソンは音量とフレーズを大きく変化させられました。
| 作品 | 主な魅力 | 向いている聴き方 |
|---|---|---|
| ナイト・トレイン | ブルースと総合力 | 最初の一枚 |
| プリーズ・リクエスト | 旋律と録音美 | 落ち着いた鑑賞 |
| ウエスト・サイド・ストーリー | 編曲の巧みさ | 原曲との比較 |
| ザ・トリオ | ライブの爆発力 | 集中して聴く |
| カナダ組曲 | 作曲と構成 | 全曲を通して聴く |
五作品をすべて集める必要はありませんが、スタジオ盤を一枚、ライブ盤を一枚選ぶと、同じメンバーが環境に応じて演奏を変える様子を比較できます。
「ナイト・トレイン」と「ザ・トリオ」を続けて聴けば、前者の簡潔な構成と後者の長い即興の違いが明確になり、黄金期の幅広さを短時間で把握できます。
MPS期とPablo期
1960年代後半以降の録音では、初期や黄金期の定番だけでは見えにくいソロピアノの奥行きや、長年の経験を積んだ演奏家としての余裕を味わえます。
MPSの「Exclusively for My Friends」シリーズは親密な環境と明瞭な録音が魅力で、トリオの勢いだけでなく、音色、タッチ、低音の響きを細部まで聴きたい人に向いています。
Pablo期にはジョー・パスやニールス=ヘニング・エルステッド・ペデルセンなどの名手との録音が増え、若い時期の鋭い推進力とは異なる、重量感と会話の自由さが前面へ出ます。
後期作品から聴き始めても問題はありませんが、黄金期の録音を先に一枚知っておくと、テンポの扱い、フレーズの間、共演者への任せ方がどのように変化したかを比較しやすくなります。
代表作を聴き終えて次を探す場合は、レーベル名と共演者を手がかりに作品を選ぶと、似た題名のアルバムが多いディスコグラフィーでも迷いにくくなります。
CDやレコードを買う前に知りたいこと

オスカー・ピーターソンの代表作には多数の再発盤があり、同じアルバムでも収録曲、音源、マスタリング、ジャケット、価格が異なる場合があります。
初めて買うときは高価な限定盤を急いで選ぶより、まず全曲を無理なく聴ける版を入手し、作品自体を気に入った後に音質重視の再発盤を検討する方法が安全です。
中古盤や輸入盤ではアルバム名が異なる例もあるため、曲目、演奏者、録音年まで確認すると買い間違いを減らせます。
再生環境を整理する
どの媒体が最適かは音質の優劣だけで決まらず、自宅の機器、聴く場所、保管スペース、予算によって現実的な答えが変わります。
作品を知る段階では検索しやすい配信が便利ですが、所有する満足感や一枚を通して聴く習慣を重視するならCDやレコードにも明確な利点があります。
- 配信は比較試聴が簡単
- CDは扱いやすく安定する
- レコードは大きな装丁を楽しめる
- 高音質配信は機器との相性が重要
- 中古盤は状態確認が欠かせない
スマートフォンの小さなスピーカーではベースとドラムの位置関係がわかりにくいため、可能であれば左右が分かれたスピーカーかヘッドホンを使うとトリオの魅力が伝わりやすくなります。
媒体にこだわりすぎて作品を聴く機会を逃すより、最初は利用できる環境で全曲を聴き、繰り返したくなった作品だけを好みの形式で購入するほうが満足度を高められます。
再発盤の違いを比べる
同じアルバム名でも、オリジナルの曲順を再現した版、別テイクを追加した版、複数作品をまとめた版があり、再生時間や鑑賞体験が変わります。
特に「ナイト・トレイン」や「プリーズ・リクエスト」のような人気作は再発の種類が多いため、価格だけでなく制作仕様を確認することが大切です。
| 確認項目 | 見るべき内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 収録曲 | 本編と追加曲 | 曲順が違う場合がある |
| 音源 | モノラルかステレオか | 好みで評価が変わる |
| マスタリング | 制作年と担当 | 新しいほど良いとは限らない |
| 盤の仕様 | CDや重量盤 | 再生機器が必要 |
| 販売形態 | 国内盤か輸入盤か | 解説や歌詞の有無が異なる |
初心者はボーナストラックの多さを優先しがちですが、アルバム本来の流れを味わいたい場合は、最初にオリジナル曲順だけを聴き、追加曲を後から再生すると印象を整理できます。
高価な盤を購入する前には、現在所有する再生機器で違いを生かせるかを考え、限定という言葉だけで判断しないことが重要です。
中古盤の表記を確認する
ピーターソンの作品は録音数が多く、同じ音源が別のジャケットや題名で再編集されていることもあるため、中古店では見たことのない作品が未聴音源とは限りません。
購入前に曲名、演奏者、録音日、原盤レーベルを確認すれば、すでに所有している音源との重複や、目的とは違う編成を選ぶ失敗を防げます。
レコードでは盤面の傷だけでなく、反り、カビ、ジャケットの水濡れ、過度なノイズの有無が重要であり、オンライン購入では状態表記と返品条件まで見る必要があります。
CDでも古い輸入盤はケースや解説書が傷んでいる場合があり、特殊な高音質ディスクは対応機器がないと本来の仕様で再生できないことがあります。
珍しい盤を集める楽しみと、音楽を快適に聴く目的を分けて考え、最初の一枚は入手しやすく状態の良い版を選ぶのが堅実です。
名演の魅力が深まる聴き方

ピーターソンの演奏は情報量が多いため、一度ですべてを聴き取ろうとすると、速いフレーズの印象だけが残ってしまう場合があります。
一回目は曲全体、二回目はリズム、三回目は共演者というように注目点を変えると、技巧と音楽性がどのように結び付いているかを無理なく理解できます。
専門的な理論を知らなくても、音量、繰り返し、間、楽器同士の応答を意識するだけで、名盤を繰り返し聴く楽しみは大きくなります。
最初の一周は流れを聴く
初めてのアルバムでは曲ごとに停止して情報を調べるより、まず最初から最後まで流し、作品全体の速さや雰囲気を体で受け取る方法が向いています。
ピーターソンのアルバムは速い曲、バラード、ブルースが配置され、曲順によって緊張と休息が作られているため、通して聴くことで一曲単位ではわからない構成が見えてきます。
- 一回目は好きな曲を探す
- 二回目はベースを追う
- 三回目はドラムを追う
- 四回目はピアノの左手を聴く
- 最後に別テイクを比べる
途中で集中が切れる場合は無理に全曲を分析せず、印象に残った一曲だけを翌日に聴き直すほうが、義務感を持たずに音楽へ親しめます。
名盤という評価に合わせて感動しようとせず、自分が反応した曲や場面を記録しておけば、その好みが次の作品を選ぶ最も信頼できる基準になります。
注目する楽器を変える
ピーターソンの右手は華やかで耳を引くため、意識しないとベースやドラムの重要な働きを聞き逃しやすくなります。
同じ曲を楽器ごとに聴き直すと、ピアノのフレーズが共演者の音に反応して生まれていることや、三人が同時に盛り上がる位置を共有していることがわかります。
| 注目点 | 聴き取れる魅力 | 適した作品 |
|---|---|---|
| 右手 | 速い即興と旋律 | ザ・トリオ |
| 左手 | 低音と和音の力 | ソロ作品 |
| ベース | 拍の推進力 | プリーズ・リクエスト |
| ドラム | 強弱と応答 | ナイト・トレイン |
| ギター | 会話と音の隙間 | ストラトフォード |
ヘッドホンでは細かなタッチを確認しやすく、スピーカーでは楽器の位置や低音の広がりを感じやすいため、同じ録音を再生方法だけ変えて比べるのも有効です。
演奏の速さについていけないと感じたときほど、ベースの一定した歩みやドラムのシンバルへ注意を移すと拍を見失いにくくなり、ピアノの自由なフレーズも整理して聞こえます。
気に入った共演者を追う
一枚を聴いて気に入ったら、次はピーターソンの名前だけでなく、レイ・ブラウン、エド・シグペン、ハーブ・エリス、ジョー・パスなどの共演者を手がかりに作品を探すとよいでしょう。
レイ・ブラウンの太く明確なベースが好きなら黄金期のトリオ作品やライブ録音へ進み、ハーブ・エリスのギターが好きなら1950年代のドラムレス編成を掘り下げられます。
サックスの温かな音色を求める人には「ベン・ウェブスター・ミーツ・オスカー・ピーターソン」が適し、歌との組み合わせが好きならエラ・フィッツジェラルドとの録音も次の候補になります。
ソロピアノに魅力を感じた場合はMPS期の作品を広げ、ライブの長い即興が好きならPablo期やモントルーの録音を探すことで、代表作だけでは収まらない演奏の幅を味わえます。
一度に大量の作品を集めるより、好きな一枚から共演者、レーベル、録音年代のいずれか一つをつないでいくと、各アルバムの違いを記憶しながらディスコグラフィーを楽しめます。
最初はナイト・トレインから聴き始めよう
オスカー・ピーターソンの名盤選びで迷った場合は、ブルース、スウィング、バラード、トリオの一体感、録音の聴きやすさがバランスよく収められた「ナイト・トレイン」を最初の一枚にするのが堅実です。
旋律の美しさと音質を重視するなら「プリーズ・リクエスト」、ライブの熱気なら「ザ・トリオ」、親しみのある舞台音楽から入りたいなら「ウエスト・サイド・ストーリー」、作曲家としての姿を知りたいなら「カナダ組曲」が有力な候補になります。
さらに、ギターを含む軽快な会話を楽しむならストラトフォードのライブ、ピアノ一台の表現力を味わうなら「マイ・フェイヴァリット・インストゥルメント」、歌やトランペットとの調和を求めるならルイ・アームストロングとの共演盤が適しています。
ピーターソンの魅力は驚異的な速弾きだけではなく、旋律を歌わせるタッチ、ブルースに根差した力強さ、共演者の個性を引き出す反応力、長い演奏を自然な物語へまとめる構成力にあります。
名盤という評価だけに縛られず、最初に心を動かされた曲を基準に編成や年代を広げていけば、膨大な録音の中から自分にとって何度も聴き返したくなる一枚を見つけられるでしょう。



