セロニアス・モンクの名盤おすすめ9選|聴く順番まで迷わず選べる!

セロニアス・モンクの名盤おすすめ9選|聴く順番まで迷わず選べる!
セロニアス・モンクの名盤おすすめ9選|聴く順番まで迷わず選べる!
名盤・名曲・音楽家

セロニアス・モンクの名盤を聴いてみたいものの、作品数が多く、どのアルバムから選べばよいのか迷っている人は少なくありません。

モンクのディスコグラフィーには、独創的な自作曲を複雑なアンサンブルで演奏した作品、親しみやすいスタンダード曲を収めた作品、ピアノだけで音楽の骨格を見せるソロ作品、クラブの熱気まで記録したライブ盤などがあり、同じ演奏家のアルバムとは思えないほど入口が多彩です。

一方で、強く打ち込まれる鍵盤、不協和に聞こえる和音、独特の間、途中で形が崩れそうに感じるリズムなどから、予備知識なしで難度の高い作品を選ぶと、魅力をつかむ前に聴くのをやめてしまう可能性があります。

ここでは、初心者にも親しみやすい作品から、作曲家としての革新性を味わえる代表作、ジョン・コルトレーンやソニー・ロリンズとの共演盤、ソロピアノやライブの名演までを順序立てて取り上げ、各作品が向いている人、聴きどころ、購入時の注意点、次に聴く候補まで具体的に紹介します。

セロニアス・モンクの名盤おすすめ9選

セロニアス・モンクのアルバムは、録音年代や編成によって聴きやすさが大きく変わるため、単純に評価の高い順で選ぶより、自分がモンクの何を聴きたいのかを考えて選ぶことが大切です。

最初から刺激の強い作品を求める人にはリバーサイド時代の意欲作が向きますが、自然なスウィングや整ったカルテット演奏から入りたい人には、コロムビア時代の作品が適しています。

以下では歴史的な重要性だけで順位を決めず、初めて聴く人への親しみやすさ、モンクらしさ、共演者の魅力、繰り返し聴いたときの奥深さを踏まえて、目的別に選びやすい9枚を紹介します。

Monk’s Dream

最初の一枚として選びやすいのが、1962年に録音され、1963年にコロムビアから発表されたMonk’s Dreamで、モンクの個性とカルテットの安定感が無理なく両立しています。

チャーリー・ラウズのテナーサックス、ジョン・オーのベース、フランキー・ダンロップのドラムによる演奏は、複雑な曲でも進行方向が見えやすく、モンク独特の間やアクセントをリズムセクションが自然に受け止めています。

タイトル曲のほか、軽快な「Bye-Ya」、ブルース感覚を味わえる「Five Spot Blues」、スタンダード曲「Body and Soul」などが並ぶため、自作曲だけを集めた作品より表情の違いをつかみやすい点も魅力です。

先鋭的なモンクだけを期待すると整いすぎているように感じる場合がありますが、まず本作で旋律、リズム、ピアノの間に慣れてからBrilliant Cornersへ進むと、奇妙に聞こえた音が意図的に配置されていることを理解しやすくなります。

Brilliant Corners

作曲家としてのセロニアス・モンクを象徴する一枚を選ぶなら、1956年に録音され、1957年にリバーサイドから発売されたBrilliant Cornersが最有力候補です。

ソニー・ロリンズ、アーニー・ヘンリー、マックス・ローチ、オスカー・ペティフォードらが参加し、曲の構造、テンポの変化、アクセントの位置が複雑に組み合わされたタイトル曲に挑んでいます。

難解さだけが語られやすい作品ですが、「Pannonica」には優雅で温かな旋律があり、ソロ演奏の「I Surrender, Dear」ではモンクの和音感覚を落ち着いて確認できるため、アルバム全体が緊張一辺倒というわけではありません。

ジャズを聴き始めたばかりの人には一度で全体像をつかみにくいものの、テーマ部分を先に覚え、ドラムやベースの動きを追い、最後にピアノへ意識を向ける順番で聴くと、混乱に見えた演奏が緻密に設計されていることに気づけます。

Genius of Modern Music, Vol.1

モンクの音楽がどのような発想から始まったのかを知りたい人には、1947年の初期リーダー録音を中心に収録したブルーノートのGenius of Modern Music, Vol.1が適しています。

後年に何度も再演される「’Round Midnight」「Ruby, My Dear」「Well, You Needn’t」などを早い段階の演奏で聴けるため、モンクが完成したスタイルを突然手に入れたのではなく、旋律、和音、休符の使い方を一貫して追究していたことが伝わります。

録音が古く、現代的なステレオ作品ほど音場が広くない一方で、各楽器の輪郭がまとまり、モンクの打鍵やアート・ブレイキーをはじめとする共演者の反応を集中して追いやすいという利点があります。

再発盤によって収録曲、曲順、別テイクの有無が異なる場合があるため、購入時にはジャケットだけで判断せず、目的の曲が入っているかを確認し、気に入った場合はVolume 2や初期録音の包括的な編集盤へ進むと理解が深まります。

Monk’s Music

モンクの曲が複数の管楽器によって立体的に鳴る面白さを味わいたい人には、1957年録音のMonk’s Musicが向いています。

コールマン・ホーキンス、ジョン・コルトレーン、レイ・コープランド、ジジ・グライス、ウィルバー・ウェア、アート・ブレイキーという強力な顔ぶれが集まり、異なる世代と演奏スタイルがモンクの楽曲を中心に交差します。

冒頭の賛美歌「Abide with Me」から「Well, You Needn’t」へ進む構成には独特の儀式性があり、各奏者のソロを楽しむだけでなく、テーマがどのような音域と音色で組み立てられているかを聴くと作品の魅力が増します。

人数が多いため最初は音が密集して聞こえる場合がありますが、ホーキンスの太い音、コルトレーンの鋭いフレーズ、ブレイキーの強い推進力を個別に追うと、モンクが共演者の個性を消さずに自分の世界へ導いていることが見えてきます。

Thelonious Himself

モンクのピアノを余計な情報なしで聴きたい人には、1957年に制作されたThelonious Himselfが有力な選択肢です。

大部分が無伴奏の演奏で構成されているため、鍵盤を強く打つ瞬間、音を伸ばさずに切る場面、旋律の途中に置かれる沈黙、左手が作る低音の重さなど、モンクの演奏を成り立たせる要素が明確に聞こえます。

特に「’Round Midnight」は、広く知られた名曲を作曲者自身がどのように分解し、再び組み立てるのかを味わえる演奏であり、美しい旋律を滑らかに弾く一般的なソロピアノとは異なる緊張感があります。

最後の「Monk’s Mood」だけはジョン・コルトレーンとウィルバー・ウェアが加わるため、完全なソロ作品だと思って選ぶと意外に感じますが、孤独なピアノの世界からアンサンブルへ扉が開くような流れとして聴くと印象的です。

Misterioso

スタジオ録音では捉えきれない熱気や即興の勢いを求める人には、1958年8月にニューヨークのファイブ・スポットで録音されたMisteriosoがおすすめです。

ジョニー・グリフィンのテナーサックス、アーメッド・アブドゥル=マリクのベース、ロイ・ヘインズのドラムを擁するカルテットは推進力が強く、テーマからソロへ移る瞬間にもクラブ演奏ならではの緊張が残っています。

グリフィンの速く密度の高いフレーズに対し、モンクは音数を増やして競うのではなく、独特の和音や間を差し込みながら演奏の方向を変えるため、伴奏者でありながらバンド全体の重心を支配していることが伝わります。

同じ夜の演奏を収めたThelonious in Actionとは対になる作品なので、本作が気に入った人は続けて聴き比べるとよく、曲の重複や別編集を含む再発盤を購入する際は収録内容を確かめる必要があります。

Thelonious Monk with John Coltrane

歴史的な共演を優先して選びたい人には、1957年に録音され、1961年に発売されたThelonious Monk with John Coltraneが欠かせません。

モンクとジョン・コルトレーンは1957年にファイブ・スポットで共演を重ねましたが、その期間を十分に記録した音源は多くないため、両者のスタジオ演奏を聴ける本作には資料としての価値もあります。

「Ruby, My Dear」ではコルトレーンが旋律を丁寧に歌い、「Trinkle, Tinkle」では複雑なテーマに食らいつくような演奏を見せるため、後年の長大な即興とは異なる、構成を吸収しながら表現を広げる時期の姿を味わえます。

一つの固定メンバーが同時期にまとめて制作した通常のアルバムとは性格が異なり、複数の編成やセッションを含む点には注意が必要ですが、曲ごとの違いを含めて二人の接点をたどれることが本作ならではの魅力です。

Solo Monk

無伴奏作品に興味はあるものの、Thelonious Himselfより親しみやすい雰囲気を求める人には、コロムビア時代のSolo Monkが向いています。

「Dinah」「I Should Care」「I’m Confessin’」などのスタンダード曲と、「Ruby, My Dear」「Ask Me Now」といった自作曲が並び、知っている旋律がモンクの手によってどのように変形されるかを自然に楽しめます。

ストライドピアノを思わせる左手、突然現れる低音、拍の位置をずらすようなアクセントには初期ジャズからの影響が感じられ、モンクを前衛的な演奏家としてだけ捉えていた人ほど新しい発見を得られます。

静かなBGMとして流すと空白の多い演奏に感じられる場合がありますが、ベースやドラムが存在しない状況で左手がリズムを作る様子に集中すると、一人の演奏の中に複数の役割が組み込まれていることが見えてきます。

Straight, No Chaser

成熟したカルテットの演奏とコロムビア時代らしい聴きやすい録音を両立した作品としては、1967年発表のStraight, No Chaserが挙げられます。

長年モンクの音楽を支えたチャーリー・ラウズに加え、ラリー・ゲイルズとベン・ライリーが参加しており、急な休止や変則的なアクセントが現れても、バンドが崩れずにゆったりと前進します。

「Locomotive」「We See」などの自作曲に加え、デューク・エリントンの「I Didn’t Know About You」も収録され、鋭い部分だけでなく、旋律を丁寧に扱うモンクの抒情性にも触れられます。

初期録音の荒々しさやBrilliant Cornersの構築性に比べると刺激が穏やかに感じられるものの、同じ曲を過去の録音と比較すると、余計な音を削りながらタイミングの精度を高めた晩年寄りの表現を理解できます。

初心者が最初の一枚を選ぶ基準

セロニアス・モンクの名盤は、それぞれ異なる魅力を持っているため、評価の高さだけで購入すると、自分が求めていた雰囲気と合わないことがあります。

ジャズに慣れていない人、ピアノを中心に聴きたい人、サックス奏者との掛け合いを楽しみたい人では、適した入口が同じとは限りません。

最初の一枚を選ぶ際は、編成、聴きやすさ、収録曲、録音年代の四つを確認し、自分が普段どのような音楽を好んでいるかと照らし合わせることが重要です。

編成から候補を絞る

最も選びやすい基準は編成であり、管楽器を含むカルテットや大型編成では奏者同士の対話を楽しめる一方、ソロ作品ではモンクのピアノそのものへ深く集中できます。

普段からサックスを中心とするモダンジャズを聴いている人にはMonk’s DreamやMisteriosoがなじみやすく、クラシックやソロピアノを好む人にはSolo MonkやThelonious Himselfが入りやすい傾向があります。

好み 向いている作品 主な魅力
安定したカルテット Monk’s Dream 親しみやすい流れ
刺激的な管楽器 Monk’s Music 多彩なソロ
ライブの熱気 Misterioso 即興の緊張感
ピアノへの集中 Solo Monk 打鍵と間の個性

編成の大きさは作品の難しさと必ずしも一致しないため、大人数だから避けるのではなく、最初は好きな楽器が参加しているアルバムを選び、その楽器を手掛かりに全体を聴く方法が有効です。

一枚目と異なる編成を二枚目に選ぶとモンクの多面性が見えやすく、カルテット盤の次にソロ盤を聴く組み合わせは、伴奏時と独奏時の違いを知るうえで特に役立ちます。

聴きやすさを優先する

初めてモンクを聴く場合は、複雑さをすべて理解しようとせず、旋律を口ずさめる曲や一定のテンポで進む演奏が多い作品を選ぶと負担を抑えられます。

Monk’s DreamやStraight, No Chaserは、モンクらしい和音と間を保ちながら、長く活動したカルテットのまとまりによって曲の輪郭が見えやすくなっています。

  • 最初は一曲目だけを繰り返す
  • テーマ部分を先に覚える
  • 好きな楽器へ意識を絞る
  • 小音量だけで判断しない
  • 別の日にもう一度聴く

モンクの演奏は最初に違和感を覚えても、旋律を覚えたあとで印象が大きく変わることがあるため、一度の試聴だけで自分に合わないと決めないほうがよいでしょう。

反対に、フリージャズや変拍子の音楽を普段から好む人は、聴きやすい作品を経由せずBrilliant Cornersから始めてもよく、入口は一般的な推薦順位より自分の音楽経験に合わせることが大切です。

代表曲の有無を確認する

アルバム単位で選びにくい場合は、「’Round Midnight」「Ruby, My Dear」「Blue Monk」「Straight, No Chaser」など、モンクの代表曲が入っている作品から候補を絞る方法があります。

モンクは同じ曲を異なる年代や編成で繰り返し録音しているため、一つの演奏を気に入ったあと、別のアルバムに収録された同曲を聴くことで、即興やテンポの違いを楽しめます。

代表曲 入口にしやすい収録作品 注目点
‘Round Midnight Thelonious Himself 無伴奏の再構築
Ruby, My Dear Monk’s Music サックスとの対話
Well, You Needn’t Monk’s Music 大型編成の迫力
Monk’s Dream Monk’s Dream カルテットの安定感

編集盤は複数時代の代表曲を効率よく聴ける一方、録音年代やメンバーが頻繁に変わるため、アルバム全体の統一感を求める人にはオリジナル作品のほうが向いています。

配信サービスで先に代表曲を数曲聴き、最も気に入った演奏が収録されたオリジナルアルバムを選ぶと、知名度だけに左右されず、自分に合う一枚へたどり着きやすくなります。

モンクの音が難しく聞こえる理由

セロニアス・モンクの音楽が難しく感じられるのは、演奏技術が不足しているからでも、無秩序に鍵盤を鳴らしているからでもありません。

一般的なジャズピアノで滑らかにつなげられる部分をあえて切り、強い和音を予想外の位置へ置き、休符までリズムの一部として扱うため、慣れた音楽の進み方と異なって聞こえます。

違和感の仕組みを知ったうえで聴くと、奇抜な演奏という印象が薄れ、旋律とリズムを必要な部分だけに絞り込んだ、非常に整理された音楽として捉えられるようになります。

不協和音に役割がある

モンクの和音は濁って聞こえることがありますが、その濁りは無作為に生じているのではなく、旋律の輪郭を強めたり、次に進む方向を一時的に曖昧にしたりする役割を持っています。

低い音域で接近した音を強く鳴らす場面では、響きの美しさより打楽器のような衝撃が前面に出るため、ピアノを旋律楽器としてだけ聴いている人ほど戸惑いやすくなります。

  • 旋律を際立たせる濁り
  • 拍を強調する和音
  • 緊張を残す音程
  • 音色を変える低音
  • 次の展開を隠す響き

最初は和音の構成を分析する必要はなく、強い響きが鳴った直後にサックスやリズム隊の動きがどう変わるかを追うと、音がアンサンブルへ与える効果を感じやすくなります。

音量を下げすぎると打鍵の強弱が平坦になり、単に濁った音だけが残る場合があるため、可能であればピアノの低音とドラムのアクセントが区別できる程度の音量で聴くことが大切です。

休符がリズムを作る

モンクの演奏では、音を弾いていない時間が演奏の停止ではなく、次の音を強く感じさせるための積極的な休符として使われています。

ピアノが突然途切れてもベースとドラムは進み続けるため、聴き手の中には存在しないはずのピアノの拍が残り、再び和音が入った瞬間に強い着地感が生まれます。

聞こえ方 実際の働き 聴くポイント
演奏が止まる 緊張を保つ ベースを追う
音が抜ける 旋律を目立たせる 直前の音を覚える
伴奏が少ない ソロへ空間を渡す サックスを聴く
間が長い 次の打鍵を強める 拍を数える

休符に慣れるには、ピアノだけを追わず、歩くように続くベースラインやシンバルの刻みを意識し、曲の時間が止まっていないことを確認すると効果的です。

Solo Monkのような無伴奏作品では自分で拍を補う必要があるため、最初はカルテット盤で休符の感覚をつかみ、その後にソロ作品へ進むとリズムの仕掛けを理解しやすくなります。

旋律が意図的に角張る

モンクのテーマは、滑らかな長い旋律より、短い音型、跳躍する音程、同じ形の反復、急なアクセントによって作られていることが多く、初めて聴くと歌いにくく感じられます。

しかし、数回聴いて音型を覚えると、複雑に見えた曲にも童謡のような単純さやユーモアがあり、演奏者がテーマを変形しても元の形を見失いにくいことに気づきます。

  • 短いフレーズを覚える
  • 繰り返す箇所を探す
  • 最後の着地点を聴く
  • テーマ再登場を待つ
  • 別テイクと比べる

「Blue Monk」のように比較的覚えやすい曲から始め、「Criss Cross」や「Trinkle, Tinkle」のように角の多いテーマへ進むと、難度を段階的に上げられます。

曲を完全に口ずさめなくても、最初の数音と終わり方を覚えるだけで即興部分との境界が見えやすくなるため、理論知識がない人でも反復して聴くことで十分に楽しめます。

年代別にたどるレーベルごとの魅力

モンクの作品選びでは、アルバム名だけでなく、ブルーノート、プレスティッジ、リバーサイド、コロムビアという録音時期の違いに注目すると全体像を整理できます。

初期には作曲家としての基本語彙が提示され、リバーサイド時代には多彩な編成で創造性が広がり、コロムビア時代には長期活動するカルテットによって演奏が磨かれました。

どの時代が優れているかを決めるより、初期の鋭さ、中期の実験性、後期の成熟という役割の違いを理解し、好みに合う時代から前後へ広げる聴き方が適しています。

ブルーノート期

ブルーノート期の録音は、モンクがリーダーとして自作曲を提示し始めた重要な記録であり、後年の代表曲が早い段階から明確な個性を備えていたことを確認できます。

録音時間や当時のレコード規格の影響もあり、一曲が比較的短くまとまっているため、長い即興に慣れていない人でもテーマとソロの関係を追いやすい点が特徴です。

注目点 特徴 向いている人
自作曲 代表曲の原型 作曲を重視する人
演奏時間 比較的コンパクト 初心者
録音 歴史的な音質 初期ジャズ好き
共演者 バップの名手 演奏史を追う人

音質の古さを欠点として避けるより、ピアノ、管楽器、ドラムが一つの塊になって前へ出る感触を味わうと、当時の小編成ジャズが持つ勢いを楽しめます。

Genius of Modern Musicの各巻を聴いたあとに同じ曲のコロムビア録音へ進むと、テーマを保ちながらテンポ、間、ソロの長さが変化していることが明確になります。

リバーサイド期

1950年代後半を中心とするリバーサイド期は、モンクの名盤を探すうえで最も候補が多い時期であり、ソロ、トリオ、カルテット、管楽器を増やした編成、ライブ録音まで幅広くそろっています。

Brilliant Corners、Monk’s Music、Thelonious Himself、Misteriosoなど、作品ごとの企画が明確で、同じ作曲家の音楽を異なる角度から体験できることが大きな魅力です。

  • 構築性を聴くならBrilliant Corners
  • 管楽器を聴くならMonk’s Music
  • 独奏ならThelonious Himself
  • 共演ならJohn Coltrane盤
  • ライブならMisterioso

録音時期が近い作品でもメンバーや編成が大きく異なるため、最初に一枚を気に入ったからといって、別作品も同じ雰囲気だと考えないほうがよいでしょう。

一方で複数作品に同じ曲が登場するため、異なる編成での再演を比較しやすく、モンクをアルバム単位だけでなく作曲家単位で聴く楽しさを最も得やすい時期です。

コロムビア期

1960年代のコロムビア期は、チャーリー・ラウズを中心とするカルテットのまとまり、聴き取りやすい録音、過去の代表曲を成熟した演奏で再提示する点に魅力があります。

初期から聴いてきた人には新曲が少ないと感じられる場合がありますが、同じ曲を繰り返すことで、テンポ、休符、伴奏、ソロの長さが洗練されていく過程を追えます。

作品 主な性格 選ぶ目的
Monk’s Dream バランス型 最初の一枚
Solo Monk 無伴奏 ピアノへ集中
Straight, No Chaser 成熟した四重奏 安定感を重視
Underground 後期の個性 深く掘り下げる

録音が整っている分、モンクの演奏が初期より穏やかになったように感じることがありますが、細かなタイミングや短い伴奏音へ意識を向けると、個性が薄れたのではなく凝縮されたことが伝わります。

初心者はMonk’s Dreamから入り、Solo Monk、Straight, No Chaserへ進み、その後でリバーサイド期へ戻ると、聴きやすさを保ちながらモンクの語法へ慣れていけます。

名盤をもっと深く楽しむ聴き方

セロニアス・モンクの名盤は、一度聴いて評価を決めるより、注目する楽器や部分を変えながら反復することで魅力が増す作品です。

最初からコード進行や音楽理論を分析する必要はなく、テーマを覚える、ベースを追う、休符を意識する、同じ曲の別録音を比べるといった方法だけでも聴こえ方が変わります。

レコード、CD、配信にはそれぞれ利点があるため、媒体の優劣を決めるのではなく、集中して聴く場面と気軽に比較する場面を使い分けることが大切です。

一曲を段階的に聴く

アルバムを最初から最後まで流して理解できないと感じた場合は、一曲だけを選び、聴く対象を変えながら三回から五回ほど繰り返す方法が効果的です。

一回目は全体の雰囲気、二回目はテーマ、三回目はベースとドラム、四回目はピアノの伴奏、五回目はソロという順番にすると、情報量の多い演奏でも構造を整理できます。

  • 一回目は全体を聴く
  • 二回目はテーマを覚える
  • 三回目はリズム隊を追う
  • 四回目は伴奏を聴く
  • 五回目はソロを比べる

曲の途中で集中が切れる場合は、冒頭のテーマと最後にテーマが戻る部分だけを先に聴き、両者の間にある即興を後から埋めるように聴くと負担を減らせます。

同じ日に繰り返しすぎると違いを感じにくくなるため、数日空けて再度聴き、以前は気づかなかった音を探す方法も、長く作品を楽しむうえで役立ちます。

同じ曲の別録音を比べる

モンクを深く聴く最良の方法の一つは、同じ曲の異なる録音を比べ、テーマの形を保ちながら何が変化しているのかを探すことです。

初期ブルーノート盤とコロムビア期の演奏を比べると、録音の違いだけでなく、テンポ、ソロの余白、左手の量、バンドがテーマを扱う方法にも変化があります。

比較項目 確認する内容 感じ取りやすい変化
テンポ 速さと揺れ 曲の性格
テーマ 音の長さ 旋律の強調点
伴奏 和音の頻度 ソロとの距離
休符 空白の長さ 緊張感
編成 参加楽器 音色と厚み

優れた録音を一つに決めることが目的ではなく、曲が固定された完成品ではなく、演奏のたびに組み替えられる設計図のような存在だと理解することが比較の意義です。

配信サービスは検索と切り替えが容易なので比較に向き、気に入った演奏を見つけたあとでCDやレコードを入手すると、目的のない収集を避けながら作品を増やせます。

再発盤の違いを確認する

モンクの名盤は長年にわたって再発売されているため、同じタイトルでもオリジナル曲順だけの版、別テイクを加えた版、複数アルバムをまとめた版、モノラルやステレオを選べる版があります。

音質を重視する人はマスタリング情報を確認し、作品本来の流れを味わいたい人はボーナストラックが本編の後ろに分けられている版を選ぶと聴きやすくなります。

  • 収録曲と曲順
  • 別テイクの有無
  • 録音日の表記
  • 参加メンバー
  • 解説書の内容
  • モノラルかステレオか

古いジャズでは音圧の高さや低音の量だけで良い再発盤を判断できず、ピアノの打鍵、シンバルの輪郭、ベースの音程が自然に聞こえるかを基準にすると選びやすくなります。

初心者は入手しやすい標準的なCDや正規配信から始めれば十分であり、演奏を気に入ってから別マスターやアナログ盤を比較するほうが、音質差に振り回されず音楽そのものを楽しめます。

最初の一枚からモンクの世界を広げよう

まとめ
まとめ

セロニアス・モンクの名盤を初めて選ぶなら、親しみやすさと個性のバランスが良いMonk’s Dreamが有力であり、作曲家としての到達点を最初から体験したい人にはBrilliant Cornersが適しています。

ピアノそのものへ集中したい場合はSolo MonkやThelonious Himself、ライブの熱気を求める場合はMisterioso、歴史的な共演を聴きたい場合はThelonious Monk with John Coltraneを選ぶと、目的と作品の性格が一致します。

モンクの音楽は、一度で理解することより、テーマを覚え、休符を感じ、同じ曲の別録音を比べる過程に面白さがあり、最初に奇妙だと感じた音が、反復するうちに必要不可欠な音へ変わっていきます。

一枚目を気に入ったあとは、同じ編成の作品だけを集めるのではなく、カルテットからソロ、スタジオからライブ、コロムビア期からリバーサイド期というように条件を一つ変えて選ぶと、ピアニスト、作曲家、バンドリーダーとしての多面的な魅力を無理なくたどれます。

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