ジャズのコード進行を耳コピするトレーニングの基本手順|機能を聴き分けて採譜の精度を高めよう!

ジャズのコード進行を耳コピするトレーニングの基本手順|機能を聴き分けて採譜の精度を高めよう!
ジャズのコード進行を耳コピするトレーニングの基本手順|機能を聴き分けて採譜の精度を高めよう!
耳コピ・アドリブ術

ジャズの曲を耳コピしようとしても、ベース音は何となく追えるのに、ピアノやギターが鳴らすコードの種類までは判別できず、途中で手が止まってしまう人は少なくありません。

ジャズでは三和音だけでなく、セブンスコード、テンションコード、代理コード、経過和音、転回形などが頻繁に使われるため、すべての構成音を一度に当てようとすると難易度が急激に上がります。

しかし、最初から細かなテンションまで聴き取る必要はなく、調性、ルート、コードの機能、三度と七度、ベースラインという順番で情報を整理すれば、複雑に聞こえるコード進行も段階的に絞り込めます。

ここでは、ジャズのコード進行を耳コピするための具体的なトレーニング手順をはじめ、頻出進行の覚え方、聴き取れないときの対処法、楽器別の練習方法、初心者が避けたい失敗まで詳しく紹介します。

ジャズのコード進行を耳コピするトレーニングの基本手順

ジャズのコード進行を正確に耳コピするには、コードネームを勘だけで当てようとせず、音源から得られる情報を大きな要素から小さな要素へ順番に分解することが重要です。

最初に曲の調性や着地点をつかみ、次にベースが示すルートを追い、その後でメジャー系かマイナー系か、ドミナントとして働いているかを判断すると候補を効率よく減らせます。

以下の手順を繰り返せば、完全な採譜ができない段階でも、曲の骨格を理解しながら実践的な聴音能力を育てられます。

曲のキーを探す

最初に行うべき作業は、各コードを細かく判定することではなく、曲全体や対象セクションの中心となるキーを探すことです。

イントロだけで決めつけず、テーマの終止部分、長く伸ばされる音、フレーズが落ち着く場所、曲の最後に鳴る和音などを聴くと、主音の候補を見つけやすくなります。

候補となる音を楽器で鳴らしながら音源を再生し、その音に戻ったときに緊張がほどける感覚があるかを確かめると、単なる音高の一致ではなく調性として判断できます。

ジャズでは一曲の途中で転調したり、一時的に別のキーへ進んだりするため、曲全体を一つのキーだけで説明できない場合は、八小節や四小節などの区切りごとに中心音を探します。

キーが分かるとダイアトニックコードや頻出する終止形を予測できるため、耳コピが無制限の音探しではなく、可能性を絞り込む作業へ変わります。

フォームを区切る

コードを聴き取る前に曲のフォームを区切ると、同じ進行が繰り返される場所や、前半と後半で異なる場所を比較できるようになります。

ジャズスタンダードでは十二小節のブルース、三十二小節のAABA形式、ABAC形式などが多く、テーマのまとまりを把握するだけでも採譜対象の範囲を小さくできます。

拍子を数えながら小節線を書き、テーマの始まり、繰り返し、ブリッジ、ターンアラウンドの位置を記録すると、コードが変わるタイミングを視覚的に整理できます。

  • 拍子とテンポを確認する
  • 四小節単位で区切る
  • 同じメロディーを探す
  • 繰り返し記号を仮置きする
  • ブリッジの開始位置を記録する

フォームを先に作らず一小節目から完璧に採ろうとすると全体像を見失いやすいため、最初は空欄が残っても構わないので曲の地図を完成させることを優先します。

ルートを追う

キーとフォームを確認したら、コードの最低音を担当することが多いベースラインを手掛かりにして、ルートの候補を一小節ずつ記録します。

ただし、ジャズベースはコードのルートだけを弾くとは限らず、三度、五度、経過音、アプローチノートを使って滑らかなラインを作るため、各拍の最低音をそのままコード名にしない注意が必要です。

コードが変わる一拍目や三拍目、フレーズが着地する音、同じコーラスで繰り返し現れる音を優先すると、ウォーキングベースの装飾音に惑わされにくくなります。

低音が聞き取りにくい場合は、音源の再生速度を落としたり、低域を少し強調したり、ベースのアタックが明確な別コーラスを探したりすると判定しやすくなります。

ルートをすべて確定できなくても、五度進行、半音下降、全音下降などの動きを線としてつかめれば、後から理論と響きの両面を使って空欄を補えます。

コードの機能を判定する

ルートの候補が並んだら、それぞれのコードが安定を作るトニック、展開を作るサブドミナント、解決を求めるドミナントのどれに近い働きをしているかを聴き分けます。

ジャズではコードネームが異なっていても似た機能を持つ場合があるため、最初から正確なテンションを求めるより、どこへ向かおうとしている響きなのかを判断するほうが進行を理解しやすくなります。

特にドミナントコードは次のコードへ強く進みたがる響きを持ちやすく、完全五度下のコードへ解決する場所を見つけると、そこから逆算してツーファイブを発見できます。

機能 聴感の目安 代表的な候補
トニック 安定して落ち着く Imaj7、Im6
サブドミナント 展開が始まる IIm7、IVmaj7
ドミナント 解決を強く求める V7、VIIハーフディミニッシュ

機能を聴く練習ではコード単体の色だけで判断せず、前後の和音との関係やメロディーの着地点も含めて確認すると、代理コードや転回形にも対応しやすくなります。

三度を聴く

ルートが分かった後に優先して確認したい構成音は三度であり、この音を判定するとコードがメジャー系かマイナー系かを大きく絞り込めます。

ルートに対して長三度が聞こえれば明るさや開放感を持つメジャー系、短三度が聞こえれば陰りを持つマイナー系として仮置きできます。

実際の演奏ではピアノやギターがルートを省略している場合もあるため、ベースで推定したルートを自分の楽器で鳴らし、その上に長三度と短三度を交互に重ねて音源とのなじみ方を比べます。

三度がメロディーや他の楽器とぶつからないよう省略されているケースでは、前後のコード、旋律音、ガイドトーンの動きから推測し、確定ではなく仮説として記録します。

一つのコードを何度も聴くだけで判断できないときは、メジャーとマイナーの二択をランダムに鳴らして答える基礎練習へ戻ると、進行の中でも音色に左右されない耳を育てられます。

七度を聴く

三度の次は七度を確認すると、メジャーセブンス、ドミナントセブンス、マイナーセブンスなど、ジャズで中心となる四和音を区別できます。

長三度と長七度があればメジャーセブンス、長三度と短七度があればドミナントセブンス、短三度と短七度があればマイナーセブンスというように、三度との組み合わせで考えます。

七度はルートの半音下または全音下に位置するため、ルートを基準に上方向だけで探すのではなく、次のオクターブの主音から下へ歌って距離を確認する方法も有効です。

ツーファイブワンでは、IIm7の短七度がV7の三度へ半音下降し、V7の短七度がImaj7の三度へ半音下降するなど、ガイドトーンが滑らかに進むことがあります。

単独のコードを当てるだけでなく三度と七度の動きを線として追うと、ベースが複雑に動いていても進行の機能を保ったままコードを推定できます。

テンションを後から加える

ルート、三度、七度、機能が判定できた後で、九度、十一度、十三度や変化テンションを確認すると、コードの基本構造を見失わずに響きの細部を採れます。

最初からすべての音を同時に当てようとすると、コードトーンとテンションの区別がつかず、正しいルートまで疑い始めることがあるため、基本コードと装飾音を分けて考えます。

トップノートは比較的耳に入りやすいので、コードの最上声を歌って楽器で探し、その音がルートに対して何度なのかを調べるとテンションの候補を見つけやすくなります。

ドミナントコードではフラットナイン、シャープナイン、シャープイレブン、フラットサーティーンなどが使われますが、演奏者やコーラスによってボイシングが変わるため、一つの表記だけが絶対的な正解とは限りません。

採譜の目的がセッション用のコード譜なら機能を示す最低限の表記にとどめ、原曲のアレンジ再現が目的ならボイシングやトップノートまで記録するなど、必要な精度を先に決めます。

音源と演奏を重ねる

書き取ったコード進行は、紙面上で理論的に成立しているかを見るだけでなく、自分の楽器で音源に重ねて違和感がないかを確認します。

ルートだけ、三度と七度だけ、基本的な四和音、テンションを含むボイシングという順番で音を増やすと、どの段階で原曲とずれたのかを特定できます。

同じコードネームでもボイシングの音域や配置が違うと印象が変わるため、響きが一致しないときにコード判定が誤っているとは限らず、転回形や省略音も検討する必要があります。

一緒に弾いたときに濁りが強くなる音、半音で不自然にぶつかる音、解決感を弱める音があれば、その構成音を一つずつ外して原因を探します。

最後にテーマから一コーラス通して演奏し、コードの切り替わる位置、拍数、リズム、ベースの動きまで合っているかを確認すれば、耳コピした内容を実際の演奏へ結び付けられます。

頻出するジャズ進行から響きを覚える

コード進行の耳コピは、毎回まったく新しい和音を一から探す作業ではなく、ジャズで繰り返し使われる定型的な動きを音のまとまりとして認識する作業でもあります。

ツーファイブワン、循環進行、マイナーの終止形などを複数のキーで弾き、ルートの動きとガイドトーンの動きを歌えるようにすると、実際の曲でも数小節単位で候補を予測できます。

ただし、理論上の形だけを暗記するのではなく、解決感、緊張感、ベースの方向、メロディーとの関係をセットで覚えることが重要です。

ツーファイブワン

メジャーキーのツーファイブワンはIIm7からV7を経てImaj7へ進む形であり、ジャズスタンダードの耳コピで最初に身に付けたい進行です。

CメジャーならDm7、G7、Cmaj7となり、ルートは完全五度ずつ下降する一方、内声では半音進行を含む滑らかな解決が生まれます。

  • CキーはDm7、G7、Cmaj7
  • FキーはGm7、C7、Fmaj7
  • B♭キーはCm7、F7、B♭maj7
  • E♭キーはFm7、B♭7、E♭maj7
  • A♭キーはB♭m7、E♭7、A♭maj7

十二キーで練習するときはコードネームを丸暗記するだけでなく、二度、五度、一度と度数で唱えながら弾くと、異なるキーでも同じ機能として聴けるようになります。

実際の曲ではV7の前に関連するIIm7が追加されたり、Imaj7がVI7へ置き換わったりするため、三つのコードだけでなく前後へ広がる可能性も意識します。

循環進行

循環進行はトニックから六度、二度、五度などを経て再びトニックへ戻る動きであり、テーマの終盤や次のコーラスへつなぐターンアラウンドで頻繁に現れます。

CメジャーならCmaj7、Am7、Dm7、G7が基本形ですが、Am7をA7へ変えたり、Cmaj7をEm7からA7へ分割したりすることでドミナントの連鎖が強調されます。

度数 基本形 変化例
I Cmaj7 Em7
VI Am7 A7
II Dm7 D7
V G7 D♭7

耳コピではコード名の違いだけに注目せず、四小節後にどこへ戻るのかを確認すると、代理コードを含んでいても循環構造を発見しやすくなります。

ターンアラウンドを十二キーで弾き比べ、ベースラインだけを歌う練習と三度と七度だけを弾く練習を分けると、低音と内声の両方から進行を認識できます。

マイナーの終止形

マイナーキーのツーファイブワンでは、二度にハーフディミニッシュコード、五度に変化したドミナントコード、一度にマイナーコードが置かれる形が基本です。

CマイナーならDm7♭5、G7、Cmとなり、G7にはフラットナインやフラットサーティーンなどのテンションが加えられることがあります。

メジャーキーのIIm7と比べて二度の五度音が半音低いため、ハーフディミニッシュ特有の不安定で暗い響きを単独でも進行内でも聴き分けます。

一度のコードはCm7だけでなくCm6やCmMaj7になる場合があり、終止した後にも緊張が残る響きなら長七度が含まれている可能性を確認します。

マイナー進行ではナチュラルマイナー、ハーモニックマイナー、メロディックマイナー由来の音が混在するため、一つの音階だけに当てはめず、実際に鳴っているガイドトーンを優先します。

毎日のイヤートレーニングを組み立てる

耳コピの能力は、長時間の採譜を一度だけ行うより、目的を限定した短い練習を継続するほうが安定して伸ばしやすくなります。

音程、コード品質、進行、実曲の採譜を一日に少しずつ組み合わせると、基礎問題で覚えた響きを音楽の流れの中で使える知識へ変換できます。

正答率だけを追わず、何を手掛かりに判断したかを言葉や度数で説明できる状態を目指すと、録音の音色や楽器編成が変わっても対応しやすくなります。

基礎練習を分ける

毎日の練習では、音程、三和音、四和音、コード進行を同時に扱わず、一回の課題で判定する要素を一つに限定します。

たとえば三度の聴き分けでは長三度と短三度だけを比較し、安定して答えられるようになってから完全五度や減五度を加えると、曖昧な感覚のまま選択肢だけが増えることを防げます。

  • 単音で主音を歌う
  • 二音で音程を判定する
  • 三和音の品質を分ける
  • 四和音の七度を聴く
  • 二小節の進行を当てる
  • 実曲を一フレーズ採る

鍵盤やギターで答えを確認するときは、正解のコードを一度鳴らして終わらず、不正解だった候補も続けて鳴らし、どの構成音が違っていたかを比較します。

基礎課題と実曲の採譜を往復すれば、問題集では正解できるのに録音では分からない状態を避け、演奏の音色やリズムを含む環境で耳を働かせられます。

時間を決める

イヤートレーニングは集中力を強く使うため、漫然と一時間続けるより、十分から二十分程度の課題を複数回に分けるほうが判断の質を保ちやすくなります。

忙しい日は音程五分、コード品質五分、実曲五分でもよく、毎日耳を使う習慣を切らさないことが長期的な成長につながります。

時間 練習内容 目的
5分 主音と音程 基準音を保つ
5分 四和音の判定 コード品質を覚える
10分 頻出進行 機能を聴き分ける
10分 実曲の採譜 知識を応用する

難しい箇所で時間を使い切らないよう、一定時間考えても分からなければ仮の答えを記録し、別のコーラスや前後の小節へ移って情報を増やします。

週末には一週間で扱った進行を通して演奏し、以前より短時間でルートや機能を判定できるかを確認すると、正解数以外の成長も把握できます。

声を使う

楽器の指板や鍵盤上の形だけでコードを覚えると、手癖で弾けても音源を聴いた瞬間には反応できないことがあるため、声を使って耳と音名を結び付けます。

ルートを歌ってから楽器で確認し、次に三度、七度、トップノートを一音ずつ歌うと、和音を複数の旋律へ分解して追えるようになります。

正確な音名がすぐに分からなくても、低い、高い、半音で下がる、同じ音にとどまるなど、音の方向を声で再現することには意味があります。

ツーファイブワンではベースラインを歌う回、三度だけを歌う回、七度だけを歌う回を分けると、各声部が異なる方向へ進む感覚を体験できます。

声域から外れる音はオクターブを移して構わないため、原音の高さを完全に再現することより、音程関係と解決の方向を保つことを優先します。

聴き取れない箇所を解決する

ジャズの録音では複数の楽器が同時に鳴り、ベースの経過音、ピアノの省略形、ギターのテンション、管楽器の旋律が重なるため、一度の再生ですべてを判定するのは現実的ではありません。

分からない小節に出会ったら、再生回数だけを増やすのではなく、対象範囲、再生速度、聴く声部、確認方法を変えて新しい手掛かりを集めます。

耳だけで粘る時間と理論で候補を絞る時間を分け、最後は必ず音源へ戻って検証することが、推測だけでコード譜を完成させないための基本です。

再生範囲を狭める

コードが分からないときは一コーラス全体を繰り返すのではなく、問題のコードを含む一小節から二小節程度へ再生範囲を狭めます。

コードの直前から再生すると前の機能を確認でき、直後まで含めるとどこへ解決したかが分かるため、対象コードだけを切り離すより前後関係を残すことが重要です。

  • コード直前の拍から再生する
  • 解決先まで範囲に含める
  • 別コーラスの同じ場所を聴く
  • テーマ中とソロ中を比べる
  • イントロとエンディングを分ける

速度を落とす場合は音程が変わらない再生機能を使い、遅くしすぎてアタックやスイングの流れが失われたら元の速度でも聴き直します。

短い区間を何十回も連続で聴くと耳が慣れて判断が鈍ることがあるため、数回聴いたら歌う、弾く、書くという別の動作へ切り替えます。

声部ごとに聴く

和音全体が塊に聞こえる場合は、低音、最上声、内声という順に注意を向け、一回の再生で一つの声部だけを追います。

低音からルート候補、最上声からメロディーとの関係やテンション候補、内声から三度と七度を得られれば、完全なボイシングを一度に聴き取らなくてもコードを組み立てられます。

声部 得られる情報 確認方法
低音 ルートと転回形 ベースを歌う
最上声 テンションと旋律 高音を単音で探す
内声 三度と七度 ガイドトーンを弾く

左右の音量を分けられる録音や楽器の定位が明確な音源では、片側を小さくして対象楽器を聴きやすくする方法もありますが、音源本来のバランスでも最終確認します。

内声が聞こえない場合は、推定したルートに対して複数の三度と七度を自分で鳴らし、音源の響きへ最も自然に溶け込む組み合わせを探します。

理論を仮説に使う

理論は耳で聴こえない音を勝手に補うためではなく、複数の候補から検証すべき順番を決めるために使います。

たとえばルートがD、G、Cと動いてCメジャーへ落ち着くなら、Dm7、G7、Cmaj7を最初の候補にし、響きが異なればD7、D♭7、G7sus4などの可能性を調べます。

メロディー音がコードの三度や七度と強く衝突する場合は、コード判定が違うだけでなく、サスペンション、経過音、ブルーノート、意図的なアボイド感を含む可能性があります。

譜面集や市販のリードシートを参照する場合も、その表記を最終的な正解として写すのではなく、録音されたアレンジとの違いを耳で確認します。

仮説を立てた後に基本コード、代理コード、転回形を順に音源へ重ねると、理論と聴感のどちらか一方へ偏らずに精度を上げられます。

楽器に合わせて練習方法を変える

コード進行の耳コピに必要な考え方は共通していますが、鍵盤、ギター、単音楽器では音の配置や確認のしやすさが異なるため、同じ練習をそのまま行う必要はありません。

鍵盤は構成音を視覚的に並べやすく、ギターはボイシングの形を移動しやすく、管楽器やベースはコードを旋律として分解して覚えやすいという特徴があります。

自分の楽器で扱いにくい要素は声や簡単な鍵盤アプリなどで補い、最終的には演奏に使う楽器で進行を再現できる状態を目指します。

ピアノで確認する

ピアノでは低音を左手、三度と七度を右手に分けると、ルートとガイドトーンの関係を同時に確認できます。

最初は両手で厚いボイシングを弾かず、左手で単音のルート、右手で三度と七度だけを鳴らして音源に重ねると、判定ミスの原因を特定しやすくなります。

  • 左手はルートだけにする
  • 右手は三度と七度を弾く
  • トップノートを後から加える
  • テンションは一音ずつ試す
  • 転回形を複数比較する

コードを鍵盤上の形で覚えるだけでなく、弾く前にルート、三度、七度を歌い、度数を口にすると、手の記憶と耳の記憶を結び付けられます。

原曲のピアノボイシングを再現したい場合も、最初にコード機能を確定してから音域、重複音、省略音を調べると、偶然似た響きを作るだけで終わりません。

ギターで確認する

ギターでは同じ音を複数の弦で弾けるため、コードフォームを先に探すと偶然押さえやすい形へ判断が引っ張られることがあります。

まず六弦や五弦だけでルートを追い、次に三弦と四弦を中心に三度と七度を加えると、一般的なフォームを使わず機能を確認できます。

段階 弾く音 狙い
第一段階 ルート 低音の流れを確認
第二段階 三度と七度 コード品質を判定
第三段階 トップノート ボイシングを特定
第四段階 テンション 原曲の色を再現

低音と高音を同時に含むフォームが難しい場合は、ルーパーや録音機能でベース音を先に録り、その上へガイドトーンを重ねます。

最終的には同じ進行を複数のポジションで弾き、音源の音域に近い配置を選ぶと、コードネームだけでなくアレンジ上の役割も理解できます。

単音楽器で確認する

サックス、トランペット、フルートなどの単音楽器では和音を同時に鳴らせませんが、コードを構成する各声部を旋律として追う練習に適しています。

一回目はルート、二回目は三度、三回目は七度、四回目はメロディーやトップノートを演奏し、それぞれを録音して重ねると和声の立体的な動きを確認できます。

移調楽器を使う場合は、実音と記譜音を混同しないよう、耳コピの段階でどちらを基準に書くかを決めます。

コードネームが確定していなくても、三度が半音で下がった、七度が同じ音に残ったという動きを採譜できれば、後から機能を推定する有力な情報になります。

単音楽器奏者がコード楽器へ判断を任せきりにせずガイドトーンを追えるようになると、アドリブでも進行の解決先を意識したラインを作りやすくなります。

初心者が避けたい耳コピの失敗

耳コピが進まない原因は聴力の不足だけではなく、難しすぎる音源を選ぶこと、最初から完全再現を目指すこと、答え合わせの方法を持たないことにもあります。

採譜に時間がかかること自体は問題ではありませんが、同じ手順で何時間も迷い続けると、何を学んだのか分からないまま疲労だけが残ります。

課題の難易度と完成基準を調整し、仮説、検証、修正の記録を残すことで、一曲ごとの経験を次の耳コピへ再利用できます。

難曲から始めない

好きな曲を題材にすることは継続の助けになりますが、複雑なリハーモナイズ、速いテンポ、厚い編成、自由なベースラインが重なる録音は初心者の最初の課題には向きません。

最初はテンポが遅く、ベースのアタックが明確で、ピアノやギターのコードが長めに鳴り、フォームが分かりやすい演奏を選びます。

  • テンポが速すぎない
  • ベースが明瞭に聞こえる
  • テーマが単純である
  • 一小節のコード数が少ない
  • 繰り返しが多い
  • 録音状態が良い

一曲全部ではなく、四小節のターンアラウンドや一回のツーファイブワンだけを課題にしても、耳コピの基本手順は十分に練習できます。

簡単な曲で手順を定着させてから、テンションが多い演奏やコンテンポラリーな作品へ段階的に移るほうが、途中で方法を見失いにくくなります。

完璧を急がない

採譜を始めた段階からコードのすべての構成音、正確なボイシング、リズム、アーティキュレーションまで確定しようとすると、最初の数小節から進めなくなります。

完成度を段階に分け、最初はフォームとルート、次にコード品質、その後にテンションとボイシングという順で更新します。

完成段階 記録する内容 用途
骨格 フォームとルート 全体像の把握
基本 三度と七度 機能の判定
詳細 テンション 響きの再現
仕上げ ボイシングとリズム アレンジ再現

コード名に自信がない場所は疑問符や複数候補を残して先へ進み、別のコーラスや後続コードから情報を得た後で戻ります。

耳コピは一回で正解を出す試験ではなく、音源から仮説を作って修正する学習なので、途中の誤りも判断基準を増やす材料になります。

譜面だけで答え合わせしない

市販の楽譜やリードシートは答え合わせに役立ちますが、録音された演奏と同じコード、テンション、ベース音が必ず書かれているとは限りません。

譜面はセッションで共有しやすい基本進行へ簡略化される場合があり、演奏者が代理コード、経過和音、異なるターンアラウンドを加えていることもあります。

自分の採譜と譜面が異なったら、すぐに自分を誤りと決めつけず、対象のコーラス、録音バージョン、コードの機能、メロディーとの整合性を比較します。

答えを確認した後は音源を聴かずに正解コードを弾くだけで終わらせず、正解と自分の候補を交互に鳴らして、聞き逃した構成音や解決の違いを言葉にします。

最終的に原曲へ重ねて自然に聞こえるかを確かめる習慣を持てば、譜面の知識を増やすだけでなく、自分の耳で判断する力を育てられます。

コードの機能を聴く習慣が上達を支える

まとめ
まとめ

ジャズのコード進行を耳コピするときは、複雑なコードネームを一音ずつ当てることから始めるのではなく、キー、フォーム、ルート、機能、三度、七度、テンションという順番で情報を整理することが大切です。

特にツーファイブワンや循環進行を十二キーで弾き、ベースラインとガイドトーンを声に出して覚えると、録音の中でも複数のコードをまとまりとして認識しやすくなります。

聴き取れない場所では再生範囲を狭め、低音、最上声、内声を分けて追い、理論を候補作りに使った後で必ず音源へ重ねて検証します。

毎日の練習は長時間である必要はなく、音程、コード品質、頻出進行、実曲の採譜を短時間ずつ継続し、正解したかだけでなく判断に使った手掛かりを記録することが効果的です。

最初は四小節のルートだけでも構わないため、自分の耳で仮説を作り、楽器で確かめ、修正する過程を積み重ねれば、ジャズ特有の代理コードやテンションを含む進行にも段階的に対応できるようになります。

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