「枯葉」は、哀愁を帯びた美しいメロディーと流れるようなコード進行を持ち、ジャズを聴き始めた人から経験豊かな演奏家まで幅広く親しまれているスタンダードナンバーです。
有名な曲である一方、フランスで生まれたシャンソンがなぜジャズの定番になったのか、どの演奏から聴けばよいのか、初心者が演奏するときは何を意識すべきかなど、調べるほど疑問が増える曲でもあります。
同じメロディーを使っていても、ゆったりと歌うボーカル版、軽快にスイングするピアノトリオ、緊張感のある管楽器中心の演奏では印象が大きく変わるため、複数の録音を聴き比べることが曲の魅力を知る近道になります。
ここでは原曲の成り立ち、歌詞が描く情景、代表的な名演、コード進行の特徴、アドリブ練習の手順、ジャムセッションで注意したい点まで整理し、枯葉をジャズとして深く味わうために必要な知識をまとめます。
枯葉をジャズで楽しむための基礎知識

枯葉は最初からジャズ演奏のために作曲された曲ではなく、フランスの舞台作品や映画と結び付いて生まれた歌曲が、英語圏へ広がる過程で多くのジャズ奏者に取り上げられるようになった作品です。
親しみやすい旋律の中に長調と短調を行き来する和声が組み込まれており、聴き手には自然に響きながら、演奏者にはジャズの基本を学べる材料を数多く与えてくれます。
曲名や有名録音だけを覚えるのではなく、背景、構成、調性、歌詞の方向性をまとめて把握すると、異なるアレンジを聴いたときにも演奏者が何を変えているのか理解しやすくなります。
定番曲としての位置づけ
枯葉がジャズスタンダードと呼ばれるのは、特定の歌手やバンドだけの持ち曲ではなく、世代や楽器編成を越えて繰り返し演奏され、演奏者同士が共通のレパートリーとして扱ってきたからです。
ジャズにおけるスタンダードとは、原曲を忠実に再現することだけを目的とする作品ではなく、よく知られたメロディーとコード進行を共通言語にして、その場の奏者が解釈や即興を加えるための土台でもあります。
枯葉は旋律を聴き分けやすく、一つのコーラスが比較的短くまとまっているため、テーマ、アドリブ、伴奏、再びテーマへ戻るというジャズ演奏の流れを初めて聴く人にも追いやすい特徴があります。
簡単な初心者向け課題として紹介されることがありますが、テンポ、音色、間の取り方、コードの置き換えによって高度な表現もできるため、習熟後も演奏し続けられる奥行きの深い曲です。
フランスで生まれた原曲
枯葉の原題はフランス語の「Les Feuilles mortes」で、ジョゼフ・コズマが作曲し、詩人で脚本家のジャック・プレヴェールがフランス語詞を手掛けた作品です。
ジョニー・マーサー財団の資料では、1945年にバレエのために書かれ、その後映画で使われた曲に、1950年に英語詞が付けられた経緯が紹介されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| フランス語題 | Les Feuilles mortes |
| 作曲 | ジョゼフ・コズマ |
| フランス語詞 | ジャック・プレヴェール |
| 英語詞 | ジョニー・マーサー |
| 関連映画 | 夜の門 |
1946年公開のフランス映画「夜の門」では旋律の一部が用いられ、映画そのものの評価とは別に、曲は歌手や演奏家によって取り上げられながら国際的なレパートリーへ成長しました。
フランス語版の背景を知ってからジャズ版を聴くと、単なる秋の情景を描いた曲ではなく、失われた時間や愛の記憶を抱える作品として演奏の陰影を受け取りやすくなります。
英語版が広げた知名度
英語題の「Autumn Leaves」はフランス語題を直訳した表現ではなく、枯れて落ちた葉を意味する原題から、秋の葉という柔らかく親しみやすい言葉へ置き換えられています。
ジョニー・マーサーによる英語詞は、原詞のすべてをそのまま翻訳するのではなく、季節の移り変わりと過ぎ去った恋の記憶を英語の響きに合わせて再構成した内容です。
英語圏の歌手が取り上げやすくなったことで、ポピュラーソング、映画音楽、ジャズボーカル、インストゥルメンタルという複数の経路から曲が広まり、聴衆にとっても耳なじみのある旋律になりました。
フランス語版と英語版では言葉の数やアクセントの位置が異なるため、同じメロディーでも歌い回しが変わり、ボーカル演奏を比較すると言語によるフレージングの違いを楽しめます。
歌詞が描く情景
枯葉の歌詞は、秋の景色を美しく眺めるだけの内容ではなく、季節の変化をきっかけに、かつて身近にいた人との時間や失われた関係を思い出す心情を描いています。
フランス語詞では過去の愛や記憶を語る物語性が強く、英語詞では秋の葉や冷たい季節を通して不在の相手を思う感情が簡潔にまとめられているため、どちらも明るく歌い切るより余韻を残す表現が似合います。
ただし、歌詞が寂しいからといって演奏を常に遅く暗くする必要はなく、ミディアムテンポのスイングでは、過去を振り返りながらも前へ進むような軽やかさを表現できます。
インストゥルメンタルで演奏する場合にも、歌詞の存在を知っていると、一音を長く残す場所、フレーズを急がず語る場所、盛り上げすぎない場所を判断する手掛かりになります。
初心者に選ばれる理由
枯葉がジャズ学習の初期に選ばれやすい最大の理由は、メロディーが覚えやすい一方で、メジャーとマイナーのツーファイブワン、五度進行、フォーム感覚など、ほかの曲にも応用できる要素が含まれていることです。
一つ一つのコードへ異なるスケールを機械的に当てはめなくても、関係する調のまとまりとして捉えやすいため、コード進行を点ではなく流れとして聴く練習に向いています。
- 旋律を口ずさみやすい
- 32小節の流れを覚えやすい
- 長調と短調を比較できる
- ツーファイブワンを練習できる
- 多くの名演を聴き比べられる
初心者向けと呼ばれていても、速いテンポでの演奏、コードの細かな置き換え、複雑なリズム処理まで簡単という意味ではないため、最初はテーマを安定して演奏することを優先します。
一曲を通じてメロディー、伴奏、アドリブ、耳コピーを順番に学べるので、複数の課題曲へ手を広げるより、枯葉を一定期間掘り下げたほうがジャズの基本を結び付けやすくなります。
32小節で進むフォーム
一般的なジャズ演奏で使われる枯葉は、8小節ずつの区切りを四つ組み合わせた32小節のフォームとして扱われ、AABCと説明されることが多い曲です。
最初の16小節では似た流れが繰り返されるため覚えやすい一方、後半ではコードの到着点やメロディーの方向が変化し、形だけで演奏していると現在位置を見失うことがあります。
アドリブでは32小節を一周する単位を一コーラスと呼び、テーマを一コーラス演奏した後、各奏者が数コーラスずつ即興し、最後に再びテーマへ戻る進行が基本です。
録音によっては本編の前に長いイントロが付いたり、最後に同じ進行を繰り返すタグや独自のエンディングが加わったりするため、曲の32小節とアレンジ部分を分けて聴くことが大切です。
よく演奏されるキー
器楽演奏の譜面では、コンサートキーのGマイナーを中心に書かれた枯葉が広く使われ、関係調であるBフラットメジャーへ進んだ後にGマイナーへ着地する流れを確認できます。
ただし、歌手の声域、使用する楽器、参照する譜面、録音のアレンジによってキーは変わり、Eマイナーなど別の調で演奏される例もあるため、枯葉は必ずGマイナーだと決めつけることはできません。
サックスやトランペットなどの移調楽器では、コンサートキーと実際に読む譜面上のキーが異なるので、セッションで「Gマイナー」と伝えられたときに自分の楽器では何調になるか事前に確認します。
練習ではまず一つのキーでメロディーとコード進行を確実に覚え、その後に半音や全音ずつ移調すると、形の丸暗記から離れて音程と機能を理解する訓練になります。
シャンソン版との違い
シャンソンとして歌われる枯葉では、歌詞の物語と発音のニュアンスが中心に置かれ、テンポを柔軟に動かしながら言葉を語るように進める演奏が多く見られます。
ジャズ版では一定の拍を保ちながらテーマを提示し、その後にコード進行を使って即興を展開するため、原曲の情感を残しつつ、リズムセクションやソリスト同士の対話が前面へ出ます。
どちらが正しい枯葉なのかを決める必要はなく、シャンソン版は言葉と物語を知る入口になり、ジャズ版は同じ素材が演奏者の個性によってどこまで変化するかを知る入口になります。
両方を続けて聴くと、ジャズ奏者が原曲のメロディーをどの程度残し、どこで音を省略し、どこへ新しいフレーズを加えているのか比較しやすくなります。
名演から聴き取れる枯葉の魅力

枯葉には数多くの録音があり、一つの演奏だけを聴いて曲の完成形を決めるより、編成や時代の異なる音源を比べたほうがスタンダードナンバーの面白さを理解できます。
最初はテーマの速さ、使用楽器、イントロの長さ、リズムの違いに注目し、慣れてきたらソロの組み立て、伴奏の密度、ベースライン、ドラムの反応まで聴く範囲を広げます。
名演を評価する知識がなくても、どの録音ではメロディーが歌って聞こえるか、どの録音では緊張感を覚えるかという自分の感覚を記録することが、ジャズを主体的に聴く第一歩です。
キャノンボール・アダレイ盤
枯葉の代表的な器楽演奏として最初に挙げられやすいのが、キャノンボール・アダレイ名義のアルバム「Somethin’ Else」に収録された長尺の演奏です。
Blue Noteの作品紹介によると、この録音にはキャノンボール・アダレイ、マイルス・デイヴィス、ハンク・ジョーンズ、サム・ジョーンズ、アート・ブレイキーが参加しています。
静かなイントロから始まり、マイルスの余白を生かした表現とキャノンボールの豊かで推進力のあるフレーズが対照的に現れるため、同じコード進行でも奏者によって言葉遣いが変わることを体験できます。
音数の多いソロだけに注目せず、テーマへ入るまでの空気、管楽器が休んでいる場面のリズムセクション、次の奏者へ受け渡す瞬間を聴くと、アンサンブル全体が一つの物語を作っていることが分かります。
ビル・エヴァンス・トリオ盤
ピアノトリオによる枯葉では、ビル・エヴァンスの「Portrait in Jazz」に収録された演奏が、ピアノ、ベース、ドラムの関係を聴く教材として親しまれています。
Concordのアルバム紹介では、ビル・エヴァンス、スコット・ラファロ、ポール・モチアンによる初期トリオの重要作であり、三者が同時に音楽を発展させる方向性が示された作品と説明されています。
| 聴く要素 | 注目点 |
|---|---|
| ピアノ | 和音の色彩と旋律 |
| ベース | 独立した動きと応答 |
| ドラム | 細かなアクセント |
| トリオ全体 | 役割が入れ替わる対話 |
伴奏者が主役を支えるだけではなく、ベースやドラムもソリストの発想へ反応しながら曲を動かしているため、一つの楽器だけを追う聴き方と三者を同時に捉える聴き方を交互に試すと効果的です。
キャノンボール盤と続けて聴くと、管楽器を中心にした広がりのある演奏と、トリオ内部の緻密な会話を中心にした演奏の違いが見え、アレンジによって同じ曲の重心が変わることを理解できます。
ボーカル版の楽しみ方
ボーカル版を聴く利点は、メロディーがどこへ向かい、どの言葉に感情の重心が置かれているのかを、器楽演奏より直接的に理解できることです。
フランス語版ではイヴ・モンタンなどの歌唱を手掛かりに原曲の物語性を感じ、英語版では歌手ごとの発音、ブレス、語尾の長さ、伴奏との距離を比べると、旋律の歌わせ方を学べます。
- 歌詞の意味を確認する
- 息継ぎの場所を聴く
- 語尾の長さを比べる
- 伴奏が入る隙間を探す
- 原語によるリズム差を味わう
楽器奏者もボーカル版を聴いて歌詞の区切りを把握すると、メロディーを音符の連続ではなく言葉のようなフレーズとして演奏しやすくなります。
歌手によってキーやテンポが大きく異なるため、伴奏練習へ使う場合は、自分が持っている譜面と同じ進行だと思い込まず、録音に合わせて耳で確認します。
コード進行に見えるジャズの基本

枯葉のコード進行は滑らかに流れるため、理論を知らない人にも自然に聞こえますが、その内部にはジャズで頻繁に使われる和声の仕組みが分かりやすい形で並んでいます。
代表的なGマイナーの譜面では、関係調のBフラットメジャーへ向かう進行と、主調のGマイナーへ戻る進行が現れ、明るさと暗さが一続きの動きとして結び付きます。
コード名を最初から最後まで暗記するだけでなく、どこへ向かうための進行なのかを理解すると、移調、伴奏、アドリブ、暗譜のすべてが安定しやすくなります。
メジャーのツーファイブワン
Gマイナーで演奏される一般的な枯葉では、関係調であるBフラットメジャーに向かうCm7、F7、Bフラットメジャー7が、メジャーキーのツーファイブワンとして現れます。
この三つを別々のコードとして覚えるより、緊張を準備するツー、解決を強く求めるファイブ、落ち着くワンという一連の方向として捉えると、コードが変わってもフレーズをつなげやすくなります。
| 機能 | 代表コード | 役割 |
|---|---|---|
| ツー | Cm7 | 流れを準備 |
| ファイブ | F7 | 緊張を形成 |
| ワン | Bフラットメジャー7 | 一時的に解決 |
アドリブでは三つのコードごとに使う音階を慌ただしく切り替えるより、Bフラットメジャーへ向かう一つの長いフレーズを考え、各コードの重要音へ自然に着地させる方法が実用的です。
伴奏ではすべての構成音を強く鳴らすのではなく、三度と七度を中心に近い音へ移動させると、少ない音数でもコード機能が明確に聞こえます。
マイナーのツーファイブワン
メジャー側の解決に続いて、Aマイナー7フラット5、D7、Gマイナーという流れが現れ、主調へ戻るマイナーのツーファイブワンを学べます。
マイナーのツーにはフラット5が含まれ、ファイブのD7ではGマイナーへの解決感を強めるために臨時記号を伴う音が使われることがあり、自然短音階だけでは説明しきれない響きが生まれます。
- ツーはAマイナー7フラット5
- ファイブはD7
- ワンはGマイナー
- 三度と七度を優先
- 解決音を先に決める
練習ではGマイナーへ着地する一音を先に選び、その音へ半音または全音で近づく短いフレーズを作ると、音階を上下するだけのソロから抜け出しやすくなります。
D7上で使える高度なスケールを増やす前に、D7がGマイナーへ進みたがっている響きを歌い、解決の方向を耳で理解することが重要です。
五度進行を耳で捉える
枯葉ではルートが四度上または五度下へ進む動きが連続し、コードが次のコードを自然に呼び込むような循環感を作っています。
musictheory.netの説明でも、ルートが四度上または五度下へ動く関係はサークル進行として整理されており、ツーからファイブへ進む動きもその一部です。
楽器を使わず、コードのルート音だけを声に出して進行を追うと、細かな和音の種類を忘れても曲の大きな方向を維持しやすくなります。
五度進行を目で理解した後は、次のコードへ移る直前にどの程度の緊張を感じるか、解決した瞬間にどのような安定を感じるかを録音から確認すると、理論が実際の音と結び付きます。
枯葉でアドリブを練習する手順

枯葉でアドリブを始めるときは、使用できるスケールを大量に覚えるより、メロディー、フォーム、コードの到着点、リズムという順番で土台を作るほうが迷いにくくなります。
音を外さないことだけを目標にするとフレーズが細切れになりやすいため、最初は少ない音でも一つの問いかけと応答を作り、32小節の中で話を展開させます。
速く演奏できることより、現在位置を見失わず、伴奏を聴き、次の解決を予測できることがセッションで使えるアドリブにつながります。
メロディーを先に歌う
アドリブ練習の前には、楽器を持たずに原曲のメロディーを歌い、伴奏がなくても32小節を最後まで進められる状態を目指します。
メロディーを歌えないまま音階練習へ進むと、コード上では間違っていない音を並べられても、曲の雰囲気やフォームから離れた演奏になりやすくなります。
- 原曲を繰り返し聴く
- 一節ずつ声でまねる
- 伴奏なしで歌う
- メトロノームに合わせる
- 楽器で同じ抑揚を再現する
音程に自信がない場合も、正確な歌唱力を競うのではなく、フレーズの始まり、長さ、休符、着地点を身体へ入れることを目的にします。
テーマを覚えた後は、リズムだけを少し変える、最後の一音だけ変える、空白を増やすという小さな変奏から始めると、原曲とのつながりを保ったまま即興へ移行できます。
ガイドトーンをつなぐ
ガイドトーンとはコードの性格や進行方向を示しやすい音で、ジャズの伴奏やアドリブでは主に三度と七度を意識してつなぐ方法が使われます。
枯葉のコード進行では、現在のコードの三度や七度が次のコードの重要音へ半音または全音で移る場面が多く、最短距離で動かすだけでも和声の流れを表現できます。
| 練習段階 | 行うこと |
|---|---|
| 第一段階 | 各コードの三度を弾く |
| 第二段階 | 各コードの七度を弾く |
| 第三段階 | 近い音へ接続する |
| 第四段階 | 経過音を一音加える |
| 第五段階 | リズムを変化させる |
最初から八分音符を連続させず、二分音符や四分音符でガイドトーンだけを演奏すると、コードチェンジを耳で感じる余裕が生まれます。
ガイドトーンの線が安定してからアルペジオや装飾音を足せば、フレーズの骨格を失わずに音数を増やせるため、ソロがコードごとに分断されにくくなります。
リズムで展開する
使う音を増やしてもソロが平坦に聞こえる場合は、音程よりリズムの変化が不足している可能性があり、同じ三音でも置く位置を変えるだけで異なる表情を作れます。
短いモチーフを一度提示し、次の小節では開始位置を後ろへずらし、その次は最後の音だけ伸ばすという展開を行うと、聴き手に関連性のある物語として伝わります。
すべての小節を埋めず、二小節演奏した後に一小節休むなど、伴奏を聴く空白を意図的に作ると、次のフレーズを考える時間とアンサンブルへ反応する余裕が生まれます。
メトロノームを二拍目と四拍目に感じる練習、録音に合わせて一音だけでリズムを作る練習、自分のソロを録音して休符の量を確認する練習を組み合わせると効果的です。
セッションで迷わない準備

枯葉を自宅で演奏できても、ほかの奏者と合わせる場面では、キー、テンポ、イントロ、ソロの順番、終わり方など、譜面に書かれていない情報を共有する必要があります。
スタンダード曲には唯一絶対のアレンジがあるわけではなく、録音や譜面によってコード、フォームの細部、エンディングが異なるため、相手も同じ形を想定しているとは限りません。
高度なフレーズを準備することより、曲の構成を保ち、ほかの演奏者を聴き、合図に反応できることが、安心して共演できる奏者としての信頼につながります。
譜面の違いを確認する
枯葉の譜面には、最後の数小節、ターンアラウンド、経過コード、メロディーの細かなリズムなどに違いがあり、異なる譜面を見ていると同じ場所で毎回ずれることがあります。
演奏前にはキーだけでなく、どの譜面を基準にするか、イントロを付けるか、最後を伸ばすか、繰り返し用のコードを使うかまで簡潔に確認します。
| 確認項目 | 主な選択肢 |
|---|---|
| キー | Gマイナーなど |
| テンポ | バラードから速いスイング |
| イントロ | なしまたは独自進行 |
| リズム | スイングやボサノバ |
| 終わり方 | 伸ばすまたはタグ |
コードの細部が違った場合は、どちらが正しいかを演奏中に主張するより、ベースとピアノが示す流れを聴き、共通する解決地点へ合わせる柔軟さが求められます。
練習用の譜面には、自分が参考にした録音、キー、イントロ、エンディングをメモしておくと、別のバージョンと混同しにくくなります。
カウントと構成を共有する
曲を始める前のカウントは単なる合図ではなく、テンポ、拍子、スイングの感じ方を全員へ伝える役割があるため、演奏したい速度を身体で感じてから明確に出します。
テーマの後に誰がソロを取るか、一人何コーラス程度にするか、ベースやドラムのソロを入れるかを確認しておけば、演奏中に順番を探る時間を減らせます。
- キーを伝える
- テンポを共有する
- リズムを決める
- ソロ順を確認する
- 最後の合図を決める
演奏中は自分のソロが終わる少し前に次の奏者へ視線を向け、テーマへ戻るときやエンディングへ入るときも、呼吸や身体の動きで合図を送ります。
合図を出す立場でなくても周囲を見る習慣を持ち、ドラムのフィル、ピアノの音域変化、管楽器の構えなどから次の展開を予測すると、曲の流れへ自然に参加できます。
自分らしい演奏に整える
名演を研究することは重要ですが、覚えたソロをそのまま再現するだけでは、テンポや編成が変わったときに対応しにくいため、学んだ要素を自分の言葉へ置き換える作業が必要です。
好きな録音から二小節程度の短いフレーズを耳コピーし、使われているリズム、着地音、コードとの関係を調べた後、別の音から始めたりリズムを変えたりして応用します。
自分らしさは奇抜な音を使うことだけではなく、音数を抑える、低い音域を生かす、メロディーを多く残す、柔らかな音色を選ぶなど、一貫した判断の積み重ねから生まれます。
毎回の演奏を録音し、フォームを失った場所、伴奏を聴けた場所、テーマとの関連が感じられた場所を振り返ると、感覚的な反省ではなく次回の具体的な課題を決められます。
枯葉を長く楽しむ聴き方

枯葉は一度有名盤を聴いて終わる曲ではなく、テンポ、編成、年代、歌唱言語、録音環境を変えて聴くたびに、新しい表情を発見できる作品です。
最初から演奏の優劣を判断しようとせず、何が違うのかを一項目ずつ探すことで、ジャズに詳しくない人でも聴き比べを楽しめます。
演奏を学ぶ人にとっても、譜面と理論だけでは分からないタイム感、音色、間、強弱、メンバー間の反応を録音から吸収する時間が欠かせません。
編成別に聴き比べる
枯葉の聴き比べでは、同じ楽器の演奏を続けて選ぶより、ボーカル、ピアノトリオ、管楽器入りのコンボ、ギター中心の演奏など、編成を変えると違いを見つけやすくなります。
ボーカル版では言葉と呼吸、ピアノトリオでは三者の対話、管楽器版では音色とフレージング、ギター版では和音と旋律を同時に扱う工夫へ注目できます。
| 編成 | 聴きどころ |
|---|---|
| ボーカル | 言葉とブレス |
| ピアノトリオ | 三者の対話 |
| 管楽器コンボ | 音色とソロの対比 |
| ギタートリオ | 和音と旋律の両立 |
| ソロ演奏 | 一人で作る構成 |
最初は各編成から一つずつお気に入りを選び、テーマの開始時間、ソロの順番、テンポ、エンディングを簡単に記録すると、漠然と聴き流すより特徴が残ります。
慣れてきたら同じ奏者の別テイクやライブ版を探し、同じ人物でも共演者や演奏時期によって解釈が変わることを確かめると、即興音楽の面白さが深まります。
テンポによる表情を味わう
枯葉はバラード、ミディアムスイング、速いスイング、ボサノバなど幅広いリズムで演奏でき、テンポが変わるとメロディーの意味や感情の距離感も変化します。
遅い演奏では一音の余韻やコードの色彩を聴きやすい反面、拍を保ちながら長いフレーズを支える難しさがあり、速い演奏では推進力が増す反面、旋律が慌ただしく聞こえない工夫が必要です。
- バラードは余韻を聴く
- ミディアムは自然な揺れを聴く
- 速い演奏はフレーズのまとまりを聴く
- ボサノバは拍の配置を聴く
- ルバートは呼吸の変化を聴く
同じ録音を速度変更して練習する場合は、音程を保てる再生機能を使い、遅くした音源だけに慣れず原速でも全体像を確認します。
演奏するテンポを決めるときは、速さの格好よさではなく、テーマを自然に歌え、コードの変化を聴き、メンバー同士が反応できる速度を選ぶことが大切です。
一つのパートを追って聴く
ジャズの録音を一度にすべて理解しようとすると情報量が多いため、一回目はメロディー、二回目はベース、三回目はドラムというように、聴く対象を限定すると細部を発見できます。
ベースを追うとコードの根音と拍の進み方が分かり、ドラムを追うとフレーズへ反応するアクセントが分かり、ピアノやギターを追うとソリストの隙間を埋める伴奏の工夫が分かります。
ソロを聴くときは音数の多さだけで評価せず、テーマの断片が現れる場所、同じリズムが繰り返される場所、休符によって緊張が作られる場所を探します。
最後に全体を聴き直すと、個別に確認したパートが互いにどのような影響を与え、32小節を通じて音楽を変化させているのか捉えやすくなります。
枯葉からジャズの聴き方と演奏力を広げよう
枯葉は、ジョゼフ・コズマの旋律とジャック・プレヴェールのフランス語詞を持つ作品から出発し、ジョニー・マーサーの英語詞や多くの演奏家の解釈を通じて、世界的なジャズスタンダードへ育った曲です。
親しみやすいメロディーの中には、32小節のフォーム、メジャーとマイナーのツーファイブワン、五度進行、長調と短調の行き来が含まれており、ジャズの基本を一曲の中で関連付けて学べます。
聴くときはシャンソン版、キャノンボール・アダレイ盤、ビル・エヴァンス・トリオ盤、さまざまなボーカル版を比べ、テンポ、編成、間、音色、伴奏の違いへ少しずつ注目すると、演奏ごとの個性が見えてきます。
演奏するときはメロディーを歌い、フォームを覚え、ガイドトーンと解決地点を確認してからリズムや音数を増やし、セッションではキーや終わり方を共有することで、枯葉を暗記した課題曲ではなく対話できるレパートリーへ変えられます。


