ジャズの名盤を聴いているものの、ベースは音域が低く、サックスやトランペットほど目立たないため、どの奏者に注目すればよいのかわからないと感じる人は少なくありません。
しかし、ベースの音を意識して聴くと、同じスタンダード曲でも、力強く歩くようなリズムを作る人、旋律楽器のように自由なフレーズを奏でる人、あえて音数を減らして余白を生かす人など、ベーシストごとの個性がはっきり見えてきます。
本記事では、ジャズ史への影響、演奏技術、音色の独自性、参加作品の充実度、現代の演奏家に与えた影響を基準に、コントラバスとエレクトリックベースの名手を横断したジャズベーシストランキングを紹介します。
順位だけを覚えるのではなく、各奏者の特徴、最初に聴きたい作品、向いているリスナー、聴き比べのポイントまで押さえることで、自分の耳で好きなベーシストを選び、ジャズをより深く楽しめるようになるでしょう。
ジャズベーシストランキングおすすめ8選

今回のランキングは単純な演奏速度や知名度だけで決めず、ジャズにおけるベースの役割をどれだけ広げたか、後世のプレイヤーが参照できる演奏をどれだけ残したかという視点を重視しています。
年代によって録音環境や楽器の役割が異なるため、アコースティックベースの奏者とエレクトリックベースの奏者を完全に同じ条件で比較することはできませんが、ジャズの流れを理解するための入口として順位を整理しました。
絶対的な優劣ではなく、歴史性、伴奏力、即興性、作曲力、音色という複数の魅力を知るための案内として活用し、気になった奏者から実際の録音を聴いてみてください。
1位チャールズ・ミンガス
チャールズ・ミンガスを1位に選んだ最大の理由は、卓越したベーシストであるだけでなく、作曲家、編曲家、バンドリーダーとしてジャズそのものの可能性を大きく押し広げた存在だからです。
ミンガスの演奏には、力強いウォーキング、唸るような低音、旋律への鋭い応答、ゴスペルやブルースの感情が同居しており、ベースがリズムを支えるだけの楽器ではなく、楽曲の物語を動かす声になっています。
最初に聴くなら『Mingus Ah Um』が入りやすく、親しみやすい旋律と複雑なアンサンブルを同時に味わえる一方、より濃密な世界に触れたい場合は『The Black Saint and the Sinner Lady』を選ぶと、構成力と感情表現の巨大さを実感できます。
派手なベースソロだけを聴きたい人には魅力が伝わりにくい場合がありますが、各楽器がぶつかり合いながら一つの音楽へまとまる過程に注目すると、公式サイトが紹介するようなベーシスト、作曲家、バンドリーダーとしての総合的な重要性が見えてきます。
ベースラインを追いながら聴くと、ミンガスが一定のパターンを機械的に繰り返すのではなく、管楽器やドラムの動きに反応して音の長さ、強さ、置く位置を変え、曲全体の緊張と解放を設計していることがわかるでしょう。
2位ジャコ・パストリアス
ジャコ・パストリアスは、フレットレスのエレクトリックベースによって、低音楽器に歌うような旋律、鮮明なハーモニクス、複雑なコード、鋭いファンクのリズムを持ち込んだ革新者です。
速いフレーズや高度な技巧が注目されやすいものの、本当の魅力は、音の立ち上がり、伸び、揺れを細かく操り、ベース一本でリズム、和音、旋律の役割を同時に感じさせる音楽的な構成力にあります。
最初の一枚にはソロ作『Jaco Pastorius』が適しており、ハーモニクスを生かした「Portrait of Tracy」、高速のテーマ処理が印象的な「Donna Lee」、グルーヴを前面に出した楽曲を通じて多面性を確認できます。
バンドの中での働きを知りたい場合は、ウェザー・リポートの『Heavy Weather』を聴き、ベースが前に出る場面だけでなく、キーボードやサックスを支えながら楽曲の輪郭を作る場面にも注意するとよいでしょう。
ジャコの奏法を表面的にまねると音数ばかりが増えやすいため、公式ディスコグラフィーから時期の異なる録音を選び、強いアクセントと静かな余白をどのように使い分けているかを聴くことが重要です。
3位レイ・ブラウン
レイ・ブラウンは、太く明瞭な音、安定したタイム感、自然に前へ進むウォーキングベースを高い次元で兼ね備え、モダンジャズにおけるアコースティックベースの模範を作った奏者です。
一音ずつの輪郭がはっきりしている一方で、演奏は硬くならず、ドラムのシンバルと滑らかに結びつきながら、ソリストが自由にフレーズを展開できる広い土台を用意します。
オスカー・ピーターソンとの共演では、ピアノの圧倒的な音数に埋もれず、リズムを整えながら適切な場所で旋律的な動きを加えており、名手を支えるベーシストに必要な判断力を学べます。
初めて聴く人にはオスカー・ピーターソン・トリオの『Night Train』が親しみやすく、ブルースやスタンダードを通して、派手さに頼らなくてもバンドを強くスウィングさせられることが伝わります。
ウォーキングベースを練習している人は、音名だけを採譜するのではなく、各音が拍のどの位置に置かれ、次のコードへどのように導いているかを確認すると、レイ・ブラウンが長く基準とされる理由を具体的に理解できるでしょう。
4位ロン・カーター
ロン・カーターは、引き締まった音色、精密なリズム、洗練された音の選択によって、共演者の個性を引き出しながら自分の存在感も残す、ジャズ史を代表するサイドマンです。
1963年から1968年まで在籍したマイルス・デイヴィス・クインテットでは、拍を明確に示すだけでなく、リズムの位置を柔軟に動かし、トニー・ウィリアムスのドラムやハービー・ハンコックのピアノと立体的な対話を作りました。
『Miles Smiles』や『Nefertiti』では、ベースが常に同じ役割を守るのではなく、曲の流れに応じて推進力、対旋律、空間の調整役を切り替えているため、現代的なリズムセクションを理解する教材になります。
公式経歴では二千二百枚を超えるアルバムへの参加が紹介されており、ジャズだけでなくクラシック、ポップス、ソウル、ヒップホップなど幅広い録音で求められてきた対応力も大きな特徴です。
音が細く聞こえる録音もあるため低音の量だけで判断せず、コードの変わり目に選ぶ音、フレーズの終わらせ方、ソリストの呼吸に合わせた間の取り方を追うと、緻密な演奏設計を味わえます。
5位ポール・チェンバース
ポール・チェンバースは、ハードバップ期を象徴する力強いウォーキングベースと、弓を使ったアルコ奏法による豊かな旋律表現を兼ね備え、短い生涯の中で膨大な名演を残した奏者です。
マイルス・デイヴィスのグループでは、速い曲でもテンポを揺らさず、コード進行を明快に示しながらドラムと一体化しており、ソリストが大胆にリズムを変化させても演奏の中心を失いません。
参加作品から入るなら『Kind of Blue』が聴きやすく、静かな曲調の中で一音の長さや余韻を調整する伴奏力を確認でき、よりベースを前面で聴くならリーダー作『Bass on Top』が適しています。
『Bass on Top』では、ベースが旋律を担当しても他の楽器とのバランスが崩れず、ピチカートとアルコの違い、低音域と高音域の使い分け、ソロから伴奏へ戻る際の自然な切り替えを学べます。
現代の録音と比べると低域が控えめに感じられる場合がありますが、イヤホンの低音を過度に強調するより、ピアノの左手やバスドラムとの境界を意識して聴くほうが、チェンバースの正確さと推進力を捉えやすいでしょう。
6位スコット・ラファロ
スコット・ラファロは、ベースが一定の拍を示し続ける従来のピアノトリオから一歩進み、ピアノやドラムと対等に会話する演奏を短期間で確立した革新的なベーシストです。
ビル・エヴァンス、ポール・モチアンとのトリオでは、ウォーキングを続ける場面と、旋律的なフレーズでピアノに応答する場面が自然につながり、三人が同時に即興しているような緊張感を生み出しました。
代表作『Sunday at the Village Vanguard』では、ラファロ作曲の「Gloria’s Step」や「Jade Visions」を含め、低音を支える機能と自由な対旋律がどのように共存するかを確認できます。
ビル・エヴァンス公式サイトでも、このトリオがピアノトリオの概念を再定義したことが紹介されており、後世のベーシストが対話的な演奏を考える際の重要な基準になっています。
フレーズの細かさだけを追うと落ち着きのない演奏に聞こえる可能性があるため、ラファロが動いた直後にエヴァンスやモチアンがどう反応するかまで聴き、三者の発言が連続する会話として味わうことが大切です。
7位デイヴ・ホランド
デイヴ・ホランドは、アコースティックとエレクトリックの両方を扱い、ポストバップ、フリージャズ、フュージョン、室内楽的な編成まで横断してきた柔軟性の高いベーシストです。
マイルス・デイヴィスの『Bitches Brew』期に参加した後も、一つの成功したスタイルを繰り返さず、編成や共演者に応じて音色、リズム、フレーズの密度を変えながら独自の音楽を発展させました。
リーダー作『Conference of the Birds』では、自由度の高い即興の中でもベースが方向感を失わず、各奏者の音を結びつけながら、必要な瞬間には旋律の中心へ出る判断力を聴けます。
比較的新しい作品から入りたい人は、クインテットやビッグバンドの録音を選ぶと、複雑な拍子や構成を知的に処理しながらも、音楽を冷たくせず強いグルーヴを保つ特徴がつかみやすいでしょう。
公式サイトの経歴に示されるように活動範囲が広いため、一枚だけで評価せず、マイルスとの録音、フリーな小編成、リーダーとしての現代的な作品を順番に聴くと、変化し続ける姿勢が見えてきます。
8位クリスチャン・マクブライド
クリスチャン・マクブライドは、レイ・ブラウンらが築いたアコースティックベースの伝統を受け継ぎながら、ファンク、ソウル、ヒップホップ、現代的なジャズへ自然に接続できる総合力を備えた奏者です。
太く明瞭な音で強くスウィングする一方、技巧を見せる場面でもリズムの芯が崩れず、速いパッセージが楽曲の流れから切り離された見せ場にならない点に音楽家としての成熟が表れています。
ストレートアヘッドな演奏を聴きたい人は『Gettin’ to It』やトリオ作品から入り、より幅広い方向性を知りたい人はビッグバンド、New Jawn、エレクトリックベースを用いたプロジェクトを聴くとよいでしょう。
公式プロフィールでは、複数のグループを通じてストレートアヘッド、実験的なジャズ、ファンク、ソウル、ラテン、ヒップホップなどを横断する活動が紹介されています。
歴史的な革新性を重視した今回の順位では8位としましたが、現在の演奏力、バンド運営、教育活動、ジャンルを越えた発信力まで含めれば、現代のジャズベースを知るうえで最初に聴くべき人物の一人です。
順位を左右した評価基準

ジャズベーシストの評価は、速く弾けるか、ソロが目立つか、参加作品が多いかという単独の尺度だけでは決められず、時代ごとに求められた役割も考慮する必要があります。
スウィング期には大編成を支える音量と拍の明確さが重要であり、ビバップ以降は複雑なコードへの対応力、ピアノトリオでは対話性、フュージョンでは電気楽器ならではの音色とリズムが評価されてきました。
ここではランキングを読む際に押さえたい基準と、順位だけでは見落としやすい考え方を整理します。
五つの視点で総合する
今回の順位では、歴史への影響、伴奏力、即興表現、音色の独自性、作品の充実度という五つの視点を組み合わせ、特定の時代や奏法だけが有利にならないようにしました。
たとえばジャコ・パストリアスは音色と革新性で非常に高く評価できる一方、レイ・ブラウンはウォーキングベースとサイドマンとしての普遍性、ミンガスは作曲を含む総合的な音楽性が大きな強みです。
| 評価項目 | 確認するポイント | 代表的な強み |
|---|---|---|
| 歴史への影響 | 後世の奏法を変えたか | ジャコ、ラファロ |
| 伴奏力 | 共演者を生かせるか | ブラウン、カーター |
| 即興表現 | 対話と展開が豊かか | ミンガス、ホランド |
| 音色 | 一音で個性が伝わるか | ジャコ、ブラウン |
| 作品 | 入口となる名盤があるか | 全候補 |
表の項目をすべて同じ配点にすると特徴が平らになるため、順位を見るときは、自分が伴奏の安定感を重視するのか、革新的なソロを重視するのかを決めると納得しやすくなります。
ベーシスト自身がリーダーではない作品も多いので、アルバムの名義だけで判断せず、誰と共演し、アンサンブルの中で何を変えたのかまで確認することが重要です。
順位に入らなかった名手
上位八人に絞ると、ジャズベースの発展に欠かせない奏者が多数外れるため、選外を実力不足や重要性の低さと受け取るべきではありません。
時代別、奏法別、作曲家としての評価、エレクトリックベース限定など、条件を変えれば上位に入る候補は大きく入れ替わります。
- ジミー・ブラントン
- オスカー・ペティフォード
- チャーリー・ヘイデン
- スタンリー・クラーク
- ニールス=ヘニング・エルステッド・ペデルセン
- エディ・ゴメス
- ジョン・パティトゥッチ
- エスペランサ・スポルディング
ジャズ史の起点を重視するならジミー・ブラントンやオスカー・ペティフォード、フュージョンの技巧を重視するならスタンリー・クラーク、歌唱や作曲を含む現代性を重視するならエスペランサ・スポルディングが有力です。
一つのランキングで終わらせず、上位奏者から影響源や共演者へ枝分かれするように聴くと、知名度だけでは見つけにくい名手にも自然にたどり着けます。
年代差を単純比較しない
古い録音では、マイクの性能、録音方法、レコードの収録時間などの制約によって低音が控えめに収録されており、現代作品と同じ再生環境で聴くと迫力が不足して感じられることがあります。
一方で現代の録音は、ベースの最低音や指が弦に触れる細かな音まで捉えやすいため、音の大きさだけを比較すると新しい奏者が過度に有利になります。
古い作品では、ベース単体の迫力よりも、ドラムとの結びつき、コード進行の示し方、管楽器のフレーズを受けるタイミングに注目すると、当時の演奏が持つ革新性を理解しやすくなります。
また、後世には一般化した奏法も、最初に取り入れた時点では大胆な挑戦だった可能性があるため、現在の技術水準だけで過去の奏者を評価しない視点が必要です。
ランキングを歴史の年表として捉え、各奏者が前の世代から何を受け継ぎ、何を変えたのかを聴き比べると、順位以上に有益な発見が得られるでしょう。
名演から始める聴き比べ

ベーシストの特徴を知るには、有名なソロだけを短く聴くより、一曲または一枚のアルバムを通して伴奏と即興の両方を追う方法が効果的です。
同じ奏者でもリーダー作とサイドマン作品では役割が異なり、編成、ドラマー、録音年代によって音色やフレーズの密度も変化します。
初心者は代表作を一度に大量購入するのではなく、聴きやすい作品、個性が強く出た作品、共演者との対話がわかる作品という順番で広げると、違いを整理しやすくなります。
最初の一枚を選ぶ
最初の作品は、歴史的な重要性だけで選ぶより、ベースの位置が把握しやすく、曲調に変化があり、繰り返し聴いても負担になりにくいものを選ぶのがおすすめです。
ランキング上位の八人には膨大な参加作品がありますが、次の候補なら奏者ごとの強みを比較的短時間でつかめます。
| 奏者 | 最初の候補 | 聴きどころ |
|---|---|---|
| ミンガス | Mingus Ah Um | 作曲と低音の迫力 |
| ジャコ | Jaco Pastorius | フレットレスの表現 |
| レイ・ブラウン | Night Train | 太いウォーキング |
| ロン・カーター | Miles Smiles | 柔軟なリズム対話 |
| ポール・チェンバース | Bass on Top | アルコと伴奏力 |
| スコット・ラファロ | Sunday at the Village Vanguard | ピアノとの対話 |
| デイヴ・ホランド | Conference of the Birds | 自由な即興の統率 |
| マクブライド | Gettin’ to It | 伝統と現代性 |
難しく感じる作品は、最初から全曲を理解しようとせず、一曲目のテーマ、ソロの伴奏、ベースソロ、テーマに戻る場面という順番で区切って聴くと構造を捉えやすくなります。
気に入った一枚が見つかったら、同じ年代の別作品と数年後の作品を一枚ずつ追加すると、奏法や音楽観の変化も楽しめるでしょう。
ベースが聞こえる環境を作る
ジャズベースが聞こえにくい場合、再生機器の価格だけが原因とは限らず、音量、周囲の騒音、イヤホンの装着状態、イコライザーの設定が影響している可能性があります。
低音を大幅に持ち上げるとバスドラムやピアノの左手まで膨らみ、かえってベースラインの輪郭がぼやけるため、最初は標準設定で音の動きを探すことが大切です。
- 静かな場所で再生する
- 中程度の音量にする
- イコライザーを一度解除する
- 片耳だけで判断しない
- 同じ曲を二回聴く
- ドラムとの境界を探す
一回目は曲全体を楽しみ、二回目は低音だけを追い、三回目に全体へ戻ると、ベースがアンサンブルに与えている影響を実感しやすくなります。
古いモノラル録音では楽器の左右位置を手掛かりにできないため、音色だけで探すより、コードが変わる瞬間やシンバルの拍と一緒に動く低音を手掛かりにするとよいでしょう。
ソロ以外を重点的に聴く
ベーシストランキングを見ると華やかなソロへ意識が向きますが、ジャズにおける実力は、他の奏者がソロを取っている数分間にどれだけ音楽を前進させられるかにも表れます。
優れたベーシストは、コードの根音を並べるだけでなく、次の和音へ向かう経路を作り、ドラマーのアクセントを受け、ソリストのフレーズが混み合ったときには音数を減らします。
同じ曲を聴きながら、ピアノソロの開始直後、ドラマーが強く反応した場所、曲の最後へ向かう場所でベースラインがどう変化したかを確認すると、伴奏の判断が見えやすくなります。
さらに、ベースソロが終わって通常の伴奏へ戻る瞬間を聴くと、奏者が主役から支える役へどのように切り替え、バンド全体の音量とテンポを整えているかがわかります。
ソロの速さに驚くだけで終わらず、曲の最初から最後まで低音の役割を追うことで、ランキング上位の奏者に共通する音楽的な責任感を理解できるでしょう。
奏法で見つける好みの名手

有名なベーシストを順番に聴いても違いがわからない場合は、奏者名ではなく、ウォーキング、対話的な伴奏、フレットレス、アルコといった奏法から好みを探す方法があります。
同じコントラバスでも、音の立ち上がりが鋭い人、長く響かせる人、拍の中心へ置く人、わずかに後ろへ置く人がおり、その違いがバンド全体の雰囲気を変えます。
自分が心地よいと感じるリズムや音色を先に把握すれば、膨大なジャズ作品の中から次に聴くべき奏者を選びやすくなります。
役割の違いを整理する
ジャズベースには複数の役割があり、一人の奏者が楽曲の途中で役割を切り替えるため、特定のフレーズだけでスタイルを決めつけることはできません。
基本的な機能を知っておくと、目立つ音が少ない場面でも、ベーシストがアンサンブルへどのように貢献しているかを言葉にできるようになります。
| 役割 | 主な働き | 注目したい奏者 |
|---|---|---|
| ウォーキング | 拍と和音をつなぐ | レイ・ブラウン |
| 対旋律 | 主旋律へ応答する | スコット・ラファロ |
| グルーヴ | 反復で推進力を作る | ジャコ |
| アルコ | 弓で旋律を歌わせる | ポール・チェンバース |
| 構成 | 展開を統率する | ミンガス |
最初は一つの役割に絞って聴き、ウォーキングなら四拍のどこで音が変わるか、対旋律なら主役のフレーズが終わった場所へどのように入るかを確認してください。
慣れてくると、一曲の中でウォーキングから反復パターンへ移り、ソロの後半で対旋律を増やすといった役割の変化も捉えられます。
音色の好みから選ぶ
演奏理論がわからなくても、音色の好みは直感的に判断できるため、初心者が自分に合うジャズベーシストを探す有効な入口になります。
同じ低音でも、木の響きが豊かな音、硬く輪郭のある音、柔らかく余韻が長い音、電気的で伸びのある音では、聴いたときの印象が大きく異なります。
- 太く温かい音ならレイ・ブラウン
- 引き締まった音ならロン・カーター
- 歌う電気的な音ならジャコ
- 荒々しい感情ならミンガス
- 軽快な対話ならスコット・ラファロ
- 現代的な厚みならマクブライド
録音年代やエンジニアによって音は変わるため、一曲だけで奏者本来の音色を断定せず、異なるレーベルやライブ録音も含めて三作品ほど比較するのがおすすめです。
好みの音が見つかったら、その奏者が影響を受けた先人や、同じ楽器を使う後輩へ広げると、音色を軸にした自分だけの系譜を作れます。
ドラムとの組み合わせを見る
ベースの印象は奏者一人だけで決まらず、誰がドラムを担当しているかによって、前へ進む感覚、拍の重さ、フレーズの自由度が大きく変わります。
レイ・ブラウンの強いウォーキングも、ドラマーのシンバルが軽い場合と重い場合では違って聞こえ、ロン・カーターの柔軟なラインもトニー・ウィリアムスの反応によって緊張感が増します。
気に入ったベース演奏を見つけたら、アルバムの参加メンバーを確認し、同じベーシストとドラマーが共演した別作品を探すと、相性によって生まれる共通のグルーヴを発見できます。
反対に、同じベーシストが別のドラマーと組んだ録音を聴けば、演奏者が相手に合わせて音の長さや拍の位置を変えていることもわかります。
個人ランキングから一歩進み、リズムセクションの組み合わせを評価するようになると、ジャズを人物の技量だけでなく、共同作業として楽しめるでしょう。
初心者が迷わない鑑賞手順

ジャズベーシストの名盤をまとめて聴いても、時代、編成、録音方法が違いすぎると、何を比べているのかわからなくなることがあります。
初心者は知識を増やしてから聴こうとするより、短い区間を繰り返し、気づいた違いを簡単な言葉で記録しながら作品を広げるほうが理解を深めやすくなります。
ここでは、ランキングを実際の鑑賞へつなげ、自分の好みを無理なく見つけるための手順を紹介します。
一週間で三人を比較する
最初から八人全員を比較すると音の記憶が混ざりやすいため、一週間に三人程度へ絞り、同じ時間帯と同じ再生機器で聴く方法がおすすめです。
ウォーキングの王道、対話型、エレクトリックという特徴の異なる三人を組み合わせると、細かな理論を知らなくても違いを感じやすくなります。
| 日程 | 聴く内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 1日目 | レイ・ブラウン | 基本の推進力を知る |
| 2日目 | スコット・ラファロ | 対話的な伴奏を知る |
| 3日目 | ジャコ | 電気ベースの表現を知る |
| 4日目 | 三人を再聴 | 音色を比較する |
| 5日目 | 好みの一人を再聴 | 理由を言葉にする |
一日につき一枚を通して聴く必要はなく、代表曲を二曲ほど選び、テーマから最初のソロが終わるまで集中して聴くだけでも比較できます。
気に入った理由を、音が太い、よく動く、落ち着く、ドラムとの一体感があるという簡単な表現で記録すると、次に選ぶ作品の基準になります。
確認する項目を絞る
一度の鑑賞で音色、コード、リズム、ソロ、録音品質をすべて理解しようとすると疲れるため、再生するたびに確認項目を一つだけ決めてください。
専門用語を正確に使う必要はなく、自分が聞き取れた変化を残すことが、受け身の鑑賞から主体的な聴き方へ移る第一歩です。
- 音は太いか細いか
- 前へ進むか落ち着くか
- 音数は多いか少ないか
- ドラムと同時に動くか
- ピアノへ応答しているか
- ソロ後に雰囲気が変わるか
最初は違いがわからなくても、同じ曲を数日後に聴くと、前回は気づかなかった音の長さやアクセントが聞こえる場合があります。
正解を探すより、自分の感想が二回目、三回目でどう変わったかを確認すると、鑑賞経験の積み重なりを実感できるでしょう。
よくある失敗を避ける
初心者によくある失敗は、ランキング上位の作品を一度聴いただけで理解できないと判断し、自分にはジャズが向いていないと思い込むことです。
歴史的な名盤には、当時の演奏習慣や録音方法を知るほど魅力が増す作品もあり、初回から強い感動が得られるとは限りません。
また、ベースソロの速さだけで順位を決めると、伴奏の安定感、音を置かない判断、共演者を生かす能力といったジャズベースの重要な価値を見落とします。
低音を聞こうとして音量を上げすぎることも避け、輪郭がつかめない場合はヘッドホンを替える前に、短い区間を繰り返したり別の録音を試したりしてください。
好きになれない奏者がいても評価を否定する必要はなく、自分は旋律的なベースより安定したウォーキングを好むなど、違和感を好みの発見へ変えることが大切です。
自分の耳で更新するジャズベーシストランキング
ジャズベーシストランキングの上位には、作曲と演奏を一体化したチャールズ・ミンガス、エレクトリックベースの表現を変えたジャコ・パストリアス、ウォーキングベースの基準を築いたレイ・ブラウンなど、それぞれ異なる理由で重要な奏者が並びます。
ロン・カーターやポール・チェンバースからはサイドマンとして音楽を成立させる力を学べ、スコット・ラファロからは対話的なピアノトリオ、デイヴ・ホランドからは変化を続ける柔軟性、クリスチャン・マクブライドからは伝統を現代へ接続する方法を聴き取れます。
最初は順位を入口にして構いませんが、代表作を聴き比べるうちに、音色、リズム、編成、共演者によって自分の評価が変わることこそ、ジャズ鑑賞の面白さです。
一人の奏者を気に入ったら、影響を受けた先人、同時代のライバル、共演したドラマー、後継世代へ順番に作品を広げることで、単なる有名人の一覧が自分だけのジャズ史へ変わります。
今回の順位を固定された結論として受け取らず、実際の演奏を繰り返し聴きながら、伴奏の心地よさ、ソロの説得力、音色の好みを基準に、自分のジャズベーシストランキングを更新していきましょう。



