ジャズギターのアドリブに挑戦したものの、覚えたスケールを上下するだけになったり、コードが変わった瞬間に弾く音が分からなくなったりして、練習の方向性を見失う初心者は少なくありません。
ジャズでは多くのコードやスケールが使われますが、最初からすべてを覚える必要はなく、現在鳴っているコードの音を確かめながら短いメロディを作ることから始めれば、知識が少ない段階でも音楽として成立するアドリブを組み立てられます。
大切なのは、難しい理論を先に詰め込むことではなく、曲のメロディ、コードトーン、リズム、休符、耳で覚えたフレーズを順番に結び付け、自分が出したい音をギターで再現できる状態へ近づけていくことです。
ここでは、ジャズギターのアドリブ初心者が最初に理解したい考え方から、練習曲の選び方、コードトーンのつなぎ方、ジャズらしいフレーズの作り方、毎日の練習メニューまでを整理し、遠回りしにくい学習手順を紹介します。
ジャズギターのアドリブ初心者はコードトーンから始める

ジャズギターのアドリブを始めるときは、使用可能なスケールを増やすより、コードを構成している音を使って短いメロディを作る練習を優先するのが効果的です。
コードトーンを中心に弾くと、音数が少なくても伴奏との関係が明確になり、コードが切り替わる感覚や着地した音の安定感を耳で理解しやすくなります。
最初は速さや複雑さを求めず、曲のメロディを歌える状態にしたうえで、限られた音を異なるリズムで配置し、コード進行の中で意味のある一音を選ぶことを目標にしましょう。
アドリブの正体
ジャズのアドリブは、何の準備もなく思い付いた音を自由に並べる行為ではなく、曲のメロディ、ハーモニー、リズム、過去に聴いてきたフレーズを材料として、その場で新しい流れを作る演奏です。
会話に置き換えると、単語や文法を知らないまま自由に話すのではなく、覚えた言葉を相手の反応や話題に合わせて組み替える作業に近いため、初心者にも一定量の語彙と基本的なルールが必要になります。
ただし、最初から何百種類ものフレーズを覚える必要はなく、二音や三音でできた短いモチーフでも、開始位置、音の長さ、休符、強弱を変えれば複数のアイデアとして展開できます。
アドリブができないと感じる人の多くは、才能が不足しているのではなく、一度に扱おうとしている音や理論が多すぎて、伴奏を聴きながら選択する余裕を失っています。
まずは一つのコードや短いコード進行を繰り返し、音数を制限した状態で問い掛けるようなフレーズと答えるようなフレーズを交互に弾くと、即興演奏が偶然ではなく組み立てられるものだと実感できます。
テーマを先に覚える
スタンダード曲でアドリブを練習するときは、コード進行だけを見てソロを始めるのではなく、原曲のテーマを歌い、ギターで弾き、どこでフレーズが始まり、どこで休んでいるかを把握することが先決です。
テーマには、その曲のコード進行に自然に響く音、特徴的なリズム、フレーズの長さ、盛り上がる場所が含まれているため、最初から優れたアドリブ教材として活用できます。
テーマの最初の二音だけを残して続きを変える、長い音を短くする、同じリズムで別のコードトーンへ移動するなど、小さな変化を加えるだけでも即興らしい演奏になります。
反対に、テーマを十分に覚えないままスケールだけで弾くと、その曲である必然性が薄れ、別の伴奏に重ねても同じように聞こえる輪郭の弱いソロになりがちです。
譜面を閉じてもテーマを口ずさめる状態を作り、一度はテーマを崩さず演奏し、次のコーラスから少しずつ音やリズムを変える方法なら、初心者でも曲とのつながりを保ったままアドリブへ移行できます。
コードトーンを軸にする
コードトーンとはコードを構成する音のことで、Cmaj7ならC、E、G、B、Dm7ならD、F、A、Cが基本となり、これらを現在鳴っているコードに合わせて使うと伴奏との結び付きが明確になります。
スケールにはコードトーン以外の音も含まれるため、指の形だけを頼りに上下すると、どの音が安定し、どの音が緊張感を作っているのかを理解しないまま演奏が進んでしまいます。
コードトーンだけの演奏はアルペジオ練習のように聞こえやすいものの、音の順番を変え、同じ音を繰り返し、休符を入れ、強拍以外から始めれば、四つの音だけでも十分にメロディを作れます。
初心者はルートから順番に上昇する形だけでなく、三度から始める形、下降する形、隣の弦へ近い音で移る形を練習し、コード名を見た瞬間に複数の入口を選べるようにしましょう。
Berkleeのコードトーンに関する解説でも、初心者がコードスケールを機械的に当てはめる前に、コードの響きを輪郭付ける力を養う重要性が示されており、音を増やす前の基礎として有効です。
三度と七度を狙う
コードトーンの中でも三度と七度は、メジャーかマイナーか、メジャーセブンスかドミナントセブンスかといったコードの性格を伝えやすく、ジャズではガイドトーンとして重視されます。
ルートはベースが演奏している場合が多く、五度もコードの種類によっては共通しやすいため、三度または七度へ着地すると、少ない音数でもコードチェンジが聞こえるソロを作りやすくなります。
| コード | 三度 | 七度 | 役割 |
|---|---|---|---|
| Dm7 | F | C | マイナー感を示す |
| G7 | B | F | 解決への緊張を作る |
| Cmaj7 | E | B | 明るい安定感を示す |
Cメジャーのii-V-Iでは、Dm7の七度であるCがG7の三度であるBへ半音下がり、G7の七度であるFがCmaj7の三度であるEへ半音下がるため、近い音へ滑らかに移るだけで進行感を表現できます。
最初は一つのコードにつき三度か七度のどちらか一音だけを選び、二分音符や全音符でつなぎ、音名を声に出しながら弾くと、指板上の位置とコードの機能を同時に覚えられます。
リズムを優先する
同じ四音を使っていても、すべてを同じ長さで並べた演奏と、八分音符、四分音符、休符、シンコペーションを組み合わせた演奏では、後者のほうが会話のような抑揚を感じさせます。
初心者は音を間違えないことに意識を取られやすく、拍の頭から連続して八分音符を弾き続けがちですが、正しい音を並べてもリズムが単調なら、練習パターンを再生しているように聞こえます。
一つのコードトーンを選び、二拍伸ばす、裏拍から二回弾く、次の小節まで休むといったリズムだけの変化を試すと、左手の負担を増やさずアドリブの表情を学べます。
メトロノームを二拍目と四拍目に感じる練習も役立ちますが、最初から速いテンポに設定せず、四分音符を安定して置ける速さで身体を揺らし、拍の流れを止めないことを優先してください。
リズムを口で歌ってから同じ形をギターで弾く習慣を付けると、指癖から音を出すのではなく、頭の中にある時間的なアイデアを楽器へ移す感覚が育ちます。
休符をフレーズに含める
アドリブでは音を弾いていない時間もフレーズの一部であり、適切な休符があると前後の音が強調され、聴き手がメロディの意味を受け取る余白が生まれます。
初心者は間が空くことを失敗だと感じて音を詰め込みやすいものの、プロの演奏を聴くと、短い問い掛けの後に休み、伴奏の反応を聞いてから次のアイデアを始める場面が多くあります。
練習では四小節のうち最初の二小節だけを弾き、残りの二小節は完全に休む方法や、一小節ごとに演奏と休符を交互に置く方法を試すと、フレーズの区切りを意識できます。
休んでいる間もコード進行と拍を追い続ける必要があるため、休符の練習はロストを防ぐ訓練にもなり、再び弾き始める場所を自分で選ぶ力につながります。
音数を減らした結果として物足りなく感じる場合は、長い音にビブラートやスライドを加えるより先に、音の入り方、切り方、強弱を整え、一音の説得力を高めることから始めましょう。
狭いポジションで弾く
ジャズギターでは指板全体を使う演奏に憧れやすいものの、初心者が最初から複数のポジションを移動すると、音名、コードトーン、リズム、次のコードを同時に処理できなくなります。
まずは五フレット付近など四フレット程度の範囲を決め、その中で各コードの三度と七度を探し、近い音同士をつなぐ練習をすると、横方向へ大きく跳ばなくても進行を表現できます。
ポジションを限定する目的は表現を狭めることではなく、選択肢を減らして耳とリズムへ意識を回し、同じ場所に存在する複数のコードの共通音や半音の動きを発見することです。
一つの位置で弾けるようになった後に、同じ内容を別のポジションへ移せば、単なる運指暗記ではなく、度数と音名を基準に指板を理解できます。
高音域へ移動することが盛り上がりにつながる場合もありますが、位置を変えるだけで展開を作ろうとせず、まず狭い範囲でリズム、音域、休符を工夫できるようになることが重要です。
最初の到達点を決める
初心者の最初の目標は、難しいスタンダード曲を高速で弾くことではなく、一つの短い進行を見失わず、コードトーンを使ったフレーズを二コーラス程度続けられる状態に設定すると取り組みやすくなります。
達成基準が曖昧なまま毎日異なるスケールやリックを練習すると、知識は増えても一曲を演奏する力が育っているか判断できないため、期間ごとに確認できる項目を絞りましょう。
- テーマを譜面なしで歌える
- コード進行を口で言える
- 三度と七度を止まらず弾ける
- 四小節単位でフレーズを区切れる
- 録音を聴いて現在地を確認できる
すべてを完璧にしてから次へ進む必要はありませんが、テーマを知らない、進行を追えない、拍を見失うという状態のまま音数だけを増やすと、問題の原因が分かりにくくなります。
一週間ごとに一項目を録音して確認し、できた項目を残しながら次の課題を一つ追加する方法なら、上達を実感しやすく、教材を次々に買い足すことも防げます。
音数を段階的に増やす
コードトーンだけで短いフレーズを作れるようになったら、いきなり複雑なスケールへ進むのではなく、経過音、半音のアプローチノート、テンションの順で音を一つずつ追加します。
追加した音は単独で覚えるのではなく、どのコードトーンへ向かうために使うのかを決めることが重要で、目的地が明確ならコード外の音を含めても緊張と解決として聞こえます。
例えばG7でBへ着地したい場合は、半音下のBフラットからBへ上がる、半音上のCからBへ下がる、AからBへ順次進行するといった複数の入口を作れます。
新しい音を加えた直後はフレーズが不自然になりやすいため、同じ二小節を繰り返し、コードトーンのみの演奏と追加音を含む演奏を交互に録音して響きの違いを比べましょう。
音数を増やす基準は理論を暗記したかどうかではなく、加えた音の緊張感を耳で認識し、狙った場所へ解決させられるかどうかに置くと、知識が演奏へ結び付きます。
最初の1曲で迷わない練習手順

アドリブの基礎を身に付けるには、多くの曲を少しずつ触るより、一つの曲をテーマ、コード、ガイドトーン、短いフレーズという複数の角度から繰り返し学ぶほうが効果的です。
初心者向けの曲でも、テンポやキー、コードの細かな置き換えによって難易度が変わるため、自分がテーマを覚えやすく、伴奏を用意しやすいバージョンを選ぶ必要があります。
ここでは曲選びから伴奏の準備、短い区間の反復までを分け、練習のたびに現在地を見失いにくい進め方を整理します。
曲を絞る
最初の練習曲には、テーマが歌いやすく、フォームが把握しやすく、同じ進行が繰り返される曲を選ぶと、指板より音楽へ意識を向けやすくなります。
候補としてはAutumn Leaves、Blue Bossa、Summertime、All of Meなどが挙げられますが、一般に初心者向けとされる曲でも、テーマを好きになれなければ繰り返し聴く習慣が続きません。
- テーマを口ずさみやすい
- コード数が多すぎない
- 好きな録音が見つかる
- 伴奏音源を用意しやすい
- 一つのキーで練習できる
一曲を選んだら、複数の演奏を聴き比べつつ、練習では使用するキーとコード進行を一つに固定し、録音ごとの細かな違いに振り回されないようにしましょう。
テーマ、伴奏、アドリブを一曲の中で結び付ける経験を積むと、別の曲へ移ったときも同じ手順を再利用できるため、曲数を増やす以上に学習方法そのものが身に付きます。
伴奏を使い分ける
バックトラックは実際の演奏感を得やすい一方で、ピアノやベースの音に頼って進行を追っていると、自分がコードを理解しているか判断しにくい場合があります。
そのため、完成された伴奏だけを使い続けず、自分でコードを録音したループ、メトロノーム、無伴奏を目的に応じて使い分けると、弱点を切り分けられます。
| 伴奏 | 主な目的 | 確認できる課題 |
|---|---|---|
| バックトラック | 曲全体を演奏する | フォームとノリ |
| 自作ループ | 短い進行を反復する | コードの接続 |
| メトロノーム | 拍を安定させる | リズムと休符 |
| 無伴奏 | 進行を音で示す | コードの輪郭 |
無伴奏で弾いた録音からコード進行が感じられない場合は、スケールを増やすのではなく、各コードの三度や七度へ着地できているかを見直す必要があります。
伴奏が豪華であるほど上達するわけではないため、できない部分を隠してくれる音源より、現在の課題が聞こえるシンプルな環境を選ぶことが大切です。
二小節を反復する
曲全体を最初から最後まで繰り返すだけでは、苦手なコード進行を通過する回数が少なく、毎回同じ場所で止まっても原因を分析しにくくなります。
まずはii-V-Iや曲中でロストしやすい二小節から四小節を切り出し、コードトーンを上昇させる練習、下降させる練習、三度だけを狙う練習など、目的を一つに絞って反復します。
短い区間で安定したら、その前後を一小節ずつ広げ、練習したフレーズへ自然に入り、自然に抜けられるかを確認すると、覚えた形を曲の中で使えるようになります。
同じリックを何度も当てはめるだけでは前後とのつながりが不自然になるため、リックの最後の音を次のコードトーンへ変える、開始拍をずらす、途中に休符を入れるといった調整も行いましょう。
部分練習と通し練習を一日の中で組み合わせ、最後に必ずテーマからアドリブを経てテーマへ戻る流れを演奏すると、細かな技術が一曲を構成する力へ統合されます。
指板上の音をコード進行へ結び付ける

ギターは同じ高さの音を複数の場所で弾けるため、形だけを暗記していると、コードが変わった際にどの音へ移ればよいか分からなくなりやすい楽器です。
すべての音名を一度に覚えるのではなく、ルート、三度、七度の順に目印を増やし、実際の曲のコード進行と結び付けながら指板を整理すると、知識をアドリブへ利用できます。
スケール練習やアルペジオ練習も、運指の速度を上げるだけで終わらせず、度数、音名、着地点を意識することで、伴奏に反応できる材料へ変わります。
音名の目印を作る
指板上の音名を覚える第一歩は、六弦と五弦のルートを基準にコードの位置を把握し、次に三弦や二弦へ同じ音を見つけていく方法です。
一日で全弦を暗記しようとせず、練習曲に登場するルートとガイドトーンを優先すると、覚えた直後から伴奏やアドリブで使えるため定着しやすくなります。
| 段階 | 覚える対象 | 練習方法 |
|---|---|---|
| 第一段階 | 六弦のルート | コード名を言って押さえる |
| 第二段階 | 五弦のルート | 曲順に移動する |
| 第三段階 | 三度と七度 | 近い音へ接続する |
| 第四段階 | 同音の別位置 | 異なる弦で探す |
音名を答える練習だけでなく、Fを弾いた後に現在のコードでは何度に当たるかを考えるなど、絶対的な音名とコード内での役割を往復させることが重要です。
指板を眺めて暗記する時間より、実際の進行をゆっくり鳴らしながら目標音を探す時間を増やすと、演奏中に必要な場所を判断する力が育ちます。
メジャースケールを一つ使う
初心者が最初に学ぶスケールは、練習曲のキーに対応するメジャースケール一つで十分ですが、ポジションを上下するだけでなく、各コードトーンへ向かう経路として使う必要があります。
Cメジャースケールを覚える場合は、Cから始めてCで終える練習だけでなく、Dm7のF、G7のB、Cmaj7のEなど、進行の中で重要な音へ着地するフレーズを作りましょう。
- 一音ずつ音名を言う
- 度数を数えながら弾く
- 三度ずつ進む
- 四音のまとまりを作る
- コードトーンで止まる
モード名を大量に覚えても、同じ音列を機械的に弾いているだけではコード感が出ないため、名称よりも現在のコードに対してどの音が安定し、どの音が動きたがるかを耳で確認してください。
一つのスケールから意味のあるフレーズを作れるようになった後で、マイナースケールやドミナント用の音を追加すれば、新しい知識と既存の響きの違いを判断しやすくなります。
アルペジオを横につなぐ
アルペジオ練習では、一つのコードを低音から高音まで往復するだけでなく、次のコードへ最短距離で移動し、進行全体を一本のメロディとしてつなぐことが重要です。
Dm7のCからG7のBへ移るような半音進行や、Dm7のFをG7でも共通音として残す動きを見つけると、ポジションを大きく変えずにコードチェンジを表現できます。
最初は各コードを一小節に二音だけ使い、前半で一音、後半で一音を弾く制限を設けると、速い運指に逃げず、次の着地点を考える時間を確保できます。
接続が安定したら二音の間へスケール音や半音を加えますが、追加した音より、強拍に置かれるコードトーンと次のコードへ向かう方向を聞き取ることを優先しましょう。
一つのポジションで接続できた後は、同じ進行を低音域、中音域、高音域へ移し、音域によってフレーズの印象がどう変わるかを録音で比較すると表現の幅が広がります。
短い素材をジャズらしいフレーズへ育てる

コードトーンを正確に弾けても、アルペジオを順番に並べるだけでは練習的に聞こえるため、リズム、モチーフ、アプローチノート、アーティキュレーションを使ってメロディへ変える必要があります。
ジャズらしさは特定のスケールだけで決まるものではなく、狙った音への入り方、裏拍の使い方、フレーズの区切り、緊張した音が解決する流れによって生まれます。
複雑なリックを丸ごと暗記する前に、二音から四音の小さな素材を変形する方法を覚えると、自分の耳とコード進行に合わせて応用できます。
モチーフを変形する
モチーフとは短い音型やリズムのまとまりで、同じ形を少しずつ変えながら繰り返すと、ソロ全体に統一感を与えられます。
初心者は毎小節新しいアイデアを出そうとして行き詰まりやすいため、最初の一小節で弾いたリズムを残し、コードに合わせて音だけを変える方法から始めましょう。
- 開始する拍をずらす
- 最後の音だけ変える
- 音程を上下へ移す
- 音の順番を反転する
- 途中へ休符を入れる
例えば三音の上昇モチーフを弾いた後、次のコードでは同じリズムの下降形で答えると、短い素材でも問いと答えの関係が生まれます。
変形を増やしすぎると元のモチーフが聞こえなくなるため、一コーラスでは一つか二つの要素だけを変え、聴き手が関連性を感じられる範囲に保つことが大切です。
アプローチノートを加える
アプローチノートは目標となるコードトーンの直前に置く音で、半音上または半音下から着地すると、短い動きの中に緊張と解決を作れます。
重要なのはコード外の音を長く伸ばすことではなく、どのコードトーンへ、どの拍で解決するかを決めてから入口の音を選ぶことです。
| 方法 | 動き | 特徴 |
|---|---|---|
| 下から接近 | 半音上行 | 明確に押し上げる |
| 上から接近 | 半音下行 | 滑らかに着地する |
| 上下で囲む | 二方向から接近 | 強い解決感を作る |
| スケールで接近 | 全音または半音 | 自然な旋律になる |
初めは各コードの三度だけを目標にし、その直前へ一音だけ加える練習を行うと、コードトーンの位置を見失わずにジャズらしい動きを試せます。
アプローチノートを連続して使うとすべての着地が同じ印象になるため、直接コードトーンへ入る場所と装飾する場所を混ぜ、フレーズの密度に差を付けましょう。
耳でコピーする
理論だけではフレーズのタイミング、音の長さ、アクセント、スライド、ピッキングのニュアンスを十分に学べないため、好きな演奏を耳でコピーする時間が必要です。
最初から一コーラス全体を採譜しようとせず、二秒から五秒程度の短いフレーズを選び、歌えるまで聴いた後でギター上の音を探すと挫折しにくくなります。
音程が完全に分からなくても、フレーズが始まる拍、最も長い音、休符の位置、最後の音だけを先に真似すれば、演奏の骨格を段階的に捉えられます。
コピーした後は原曲と同じキーで再現するだけで終わらせず、最後の音がコードの何度かを調べ、別のコードや別の位置で使えるように変形してください。
一つのフレーズを覚えたら、自分のアドリブの中で一回だけ使い、その前後を自分の言葉でつなぐ練習をすると、借りた語彙が丸暗記から実用的な表現へ変わります。
挫折を防ぐ練習設計

ジャズギターは学ぶ項目が多いため、毎回コード、スケール、リック、理論を広く触るだけでは、何が上達したのか分からず練習が散漫になりやすい傾向があります。
短い時間でも、耳、指板、リズム、曲という役割を分け、最後に一つの演奏へまとめる流れを作ると、基礎練習とアドリブの関係を実感できます。
録音による振り返りやセッションを想定した練習も早い段階から取り入れ、完璧になるまで人前で弾けないという考えを避けることが継続につながります。
二十分を配分する
毎日長時間を確保できない場合でも、二十分を目的別に区切れば、指の運動だけで終わらず、実際の曲でアドリブする時間まで含められます。
各項目を短く設定すると集中力を保ちやすく、終了時刻が決まっているため、一つの苦手箇所だけで練習全体を使い切ることも防げます。
| 時間 | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 三分 | テーマを歌う | 曲を耳へ入れる |
| 四分 | ガイドトーン | 進行を把握する |
| 四分 | 短い区間の反復 | 接続を整える |
| 四分 | コピーした素材 | 語彙を増やす |
| 五分 | 通し演奏を録音 | 曲としてまとめる |
時間配分は固定する必要はありませんが、最後の通し演奏を省かないことで、部分練習が実際のテンポやフォームの中で機能するかを確認できます。
休日に長く練習できる場合も、新しい内容を無制限に追加するのではなく、平日に行った二十分のメニューを深掘りし、同じ課題を別のキーやテンポで試すと定着しやすくなります。
録音で一項目を直す
演奏中は次のコードや運指へ意識が向いているため、自分では弾けていると思っていても、録音ではテンポの揺れ、フレーズの詰め込み、同じ音型の反復が明確に聞こえることがあります。
録音を聴く際にすべての欠点を同時に直そうとすると落ち込みやすいため、一回の振り返りでは評価項目を一つだけ選びましょう。
- フォームを見失っていないか
- コードチェンジが聞こえるか
- 休符が入っているか
- 同じリズムに偏っていないか
- テーマへ自然に戻れているか
改善点を見つけたら、次の録音ではその項目だけを意識し、ほかの部分が多少不完全でも最後まで弾き切ることで、実戦的な集中力を養えます。
以前の録音を消さずに残し、一か月後に同じ曲、同じテンポ、同じ伴奏で録り直すと、日々の練習では気付きにくい変化を客観的に確認できます。
セッションを想定する
ジャムセッションへ参加するには高度なアドリブが必要だと思われがちですが、初心者に求められるのは、曲名とキーを確認し、テーマを演奏し、フォームを保ち、適切な長さでソロを終える基本動作です。
練習ではテーマを一回、アドリブを一回または二回、再びテーマを一回という流れを決め、伴奏を止めずに最後まで進める習慣を付けましょう。
途中で音を外しても小節の頭や次のコードトーンへ戻れば演奏は続けられるため、間違えた瞬間に停止する練習より、拍とフォームを優先して復帰する練習が役立ちます。
ほかの演奏者がソロを取っている場面を想定し、ギターの音量を下げてコードを少なく弾く練習や、完全に休みながらフォームを数える練習も行うと、アンサンブル全体を聞く余裕が生まれます。
参加前には演奏する可能性のある曲を数曲に絞り、キー、イントロ、エンディング、テーマの開始位置を確認しておくと、アドリブ以外の不安を減らして音楽的なやり取りに集中できます。
コードトーンを土台に自分のフレーズを増やそう
ジャズギターのアドリブ初心者は、数多くのスケールを覚えることより、テーマを歌い、コード進行を追い、三度や七度を含むコードトーンへ狙って着地する練習から始めると、少ない音でも伴奏に合ったソロを作れます。
コードトーンだけでは単調に感じる段階になったら、リズムの変化、休符、モチーフの反復、半音のアプローチノートを一つずつ追加し、何を加えたことで響きが変わったのかを耳と録音で確かめてください。
曲全体で行き詰まる場合は二小節から四小節へ区切り、狭いポジションでガイドトーンをつないだ後、前後の小節へ範囲を広げれば、覚えた材料を実際のフォームへ戻しやすくなります。
一日二十分でも、テーマ、ガイドトーン、部分練習、耳で覚えた素材、通し録音を組み合わせれば、理論と演奏を分断せずに学習を続けられます。
速く複雑に弾くことを急がず、一音の役割、着地する拍、前後の休符を意識して一曲を最後まで演奏する経験を積み重ねることが、自分の耳で選び、自分の言葉としてアドリブを弾くための確実な土台になります。



